何でも奪う姉がいるので、私は王子の権力でやり返します

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 私には五つ上の姉がいる。

 その姉は私から色々な物をうばってくる。

 大切な持ち物。父の愛情。親しい友達。婚約者。

 どうしてそんな事をするのか。


「どうしてお姉ちゃんは、私に酷い事ばかりするの?」


 それは幼い頃に、姉に直接ぶつけた疑問だ。

 そしたらこう返って来た。


「あんたが私から大切なものを奪ったからよ。やられた後にやり返すのは普通の頃でしょ?」


 それは、妹である私が母の命を奪った事がきっかけだった。

 もともと母は病弱で、体が弱かった。

 けれど、私を産むために無茶をして、亡くなってしまったのだ。


「姉妹、二人で一緒に支え合って生きていくのよ」


 母が残した遺言の手紙にはそう書いてあったけれど。


 残念ながらそれは叶わなかった。





「あいつが私からお母さんをとったんだ。許せない。ねぇ、パパもそう思うでしょ?」

「そうだな。あの子のせいで妻は死んだんだ」


 姉は母が大好きだったから、母が亡くなる原因を作った私を嫌っているのだろう。


 ある程度は仕方ないと我慢していた。

 歩み寄りができるのではないかと試行錯誤もした。


 けれど、姉の為に用意したバースデーケーキ―を踏みにじられた時。私は悟ったのだ。


「あの、これ頑張って作ったの。お姉ちゃん、苺が好きでしょ? だから上にたくさんのっけてみたんだけど」

「こんなもの、食べられるわけないでしょ。私が本当にほしいものは用意できないくせに!」


 もう私達の関係が修復する事は、一切ないのだと。






 だから、私は姉にやり返す事にした。


「仲直りできないなら、どっちかが駄目になるまで滅ぼし合うしかないわ。お母さんごめんね」


 秘策はある。

 姉に奪われないように息をひそめて生活する中で、知った情報が役立ちそうだった。


「やり返すためには、あの人の権力を使う必要があるわ」


 私が、通っている学園。

 そこには身分を偽って通学している王子がいる。


 学園の学習期間は八年だから、姉が在籍している間は、息をひそめて目立たないようにしていたから、その際に気づけた。


 校舎裏で暇な時間を持て余している時に、王子と護衛が会話しているのを聞いてしまったのだ。


 この情報を、姉は知らない。


 だから私は王子にとりいった。


 そして、王子を私に惚れさせて、姉の非道な行いを少しずつ伝えていったのだ。


「私にはお姉さんがいるけれど、嫌われているんです」


「誕生日のケーキも、頑張って作ったのにぐちゃぐちゃにされてしまって」


「婚約者の事は好きではなかったけれど、その人もお姉さんに奪われてしまった」


「それに学園でも嫌がらせをされているんです」


 やや誇張したり、ない事を言ったりしたが、王子はもう私にぞっこんだったから、多少強引な話をしても問題にはならなかった。


 怒りにふるえた王子は、姉を断罪。


 姉は、学園と家を追放される事になった。






 これで、私と姉の関係は一区切りついたのだ。


 断罪に協力してくれた王子には感謝してもしきれない。


 だから今でも私は王子と付き合っている。


 失恋の痛みを負わせるより、嘘を貫き通した方がいいと思って。


 王子の心に他に好きな人ができるまで、恋人ごっこを続ける事にしよう。


 そういえばもうすぐ王子の誕生日だ、お手製のバースデーケーキでも作ってプレゼントしてみようか。


 王子はちょろいから、手作りプレゼントを与えるだけで好感度を稼ぐ事ができる。


 幸い、何かを作るのは得意だ。


 姉のイジワルのせいで、食事を作ってもらえない事が多かったから。


「俺の為に、ケーキを作ってくれるなんて嬉しいよ。ありがとう」


 でも、こんな事くらいで喜んでくれるなんて、本当に便利で扱いやすい彼氏だな。


 本当にーー。


「あれ? どうして泣くんだ? あっ俺、悪い事言っちゃったか。ごめんな」



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何でも奪う姉がいるので、私は王子の権力でやり返します 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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