Dragon App -ドラゴンアプリ-
坂条 伸
第一章 始まり
第1話 異世界への穴
俺の名前は
今日もいつもの仕事帰りいつもの道を帰宅中、趣味で書いている小説のネタを思いついて、スマホにメモをしながら歩いていた。(⚠︎危険ですので、歩きスマホはやめましょう)
最近ネットの小説投稿サイトに投稿し始めたばかりで、ブラック気味な仕事から現実逃避するためか、自然と異世界転生や転移ものがメインになっていた。
特になにも、いつもと違うことなど何一つとしてなかったはずの一日の終わり、自宅まであと五分といったところだ。
スマホをいじりながら歩いている(⚠︎重ね重ね、皆さんはやめましょうね)と、突然足下の地面の感覚が無くなり浮遊感を感じた。俺は驚く間もなく一瞬のうちに足下に現れた穴に吸い込まれ、意識を失いながら落ちていった。
完全に意識を失う前に頭の中に声が響いた。
『実績が解除されました。報酬が与えられます』
◇◇◇◇◇◆◆◆◆◆
『実績が解除されました。報酬が与えられます』
全身を襲う激しい痛みで目を覚ますと、そこは台風が通り過ぎた後の森のような場所だった。
俺は何故か岩を背にし、ずり落ちて足を放り出すような形で地面に座っていた。
「なんだ……、あれ……」
100mほど先の場所では二体の巨大な化け物達が争っている。その争いのせいで辺り一帯が荒れているようだ。俺の体の痛みは、化け物達の争いによる余波によって、岩に叩きつけられたのだろうことが想像できた。
「え? ……ど、ドラゴン?」
巨大な化け物をよく見ると、アニメやゲームで見るようなドラゴンのようだ。
白く優美なドラゴンと、黒く禍々しいドラゴン。
どちらも傷だらけで、辺り一面の破壊痕からすると、かなり長時間争っていたようだ。
現実感の乏しい光景の中、身体中の痛みがあの光景を現実のことだと突き付けてくる。
……どうやら俺は異世界に転移してしまったらしい。
それも、最悪な場所へ最悪のタイミングで……。
「マジ……か、よ」
一刻も早くこの場所から逃げ出そうとするが、身体中に痛みが走り、ほとんど動くことが出来ない。
俺はこのどうすることも出来ない現実を直視出来ず、呆然とドラゴンの争いを眺め続けながらも、いつもの癖で無意識のうちにスマホを探しだそうと右手を動かしていた。
すると、右手の中に突然重みを感じた。
そこに視線を向けると、今まで無かった筈のスマホが掌の中に存在していた。画面は触れてもいないのに開いていて、ダウンロードした覚えの無いアプリが点滅している。
〈
誘われるがままに指を動かしアプリを開いた。
[魔法一覧]
[魔法創造]
[因子一覧]
[因子抽出]
混乱する頭のまま、取り敢えず[魔法一覧]を開いてみる。
[魔法一覧]
【SLOT1-(空き)】
【SLOT2-(空き)】
【SLOT3-(空き)】
【SLOT4-(空き)】
【SLOT5-(空き)】
SLOTの一つに触れて見ると『創造されていません』と表示された。目次に戻ると、次は[魔法創造]を開く。
[魔法創造]
【SLOT1-(空き)】
【SLOT2-(空き)】
【SLOT3-(空き)】
【SLOT4-(空き)】
【SLOT5-(空き)】
魔法一覧の表示とほとんど同じようだ。こちらもSLOTの一つに触れて見ると、今度はマニュアルのようなものが表示された。
マニュアルによると、SLOT数は表示の通り最大で五つ。この世界の魔力を保有する生物の最大魔法保持数と同じらしい。本来なら生まれた時や成長を自覚した時、生命の危機を感じた時などに魔法を獲得するようだ。
アプリで創れる魔法の種類は、「常在」「発動」「具現」「召喚」の四つ。アプリでは創れないようだが、他にも「加護」や「神罰」といった特殊な魔法がいくつか存在しているらしい。
「常在」は謂わゆるパッシブスキルのようなもので、一定の魔力を常に消費するが常時効果がある魔法。
「発動」は「常在」よりも魔力を多く消費して、瞬間的、または一時的に強力な効果を発揮する魔法。
「具現」は「発動」よりも魔力を多く消費して、武具や道具などの形に物質化する魔法。
「召喚」は「具現」よりも魔力を多く消費して、自分に従う仮想の生き物を創りだす魔法。
アプリで創ることが出来る四種の魔法のうち、「常在」だけはさらに連動して「発動」か「具現」を追加することが可能。しかし、単体の「発動」や「具現」に比べると効果は少し低下してしまう。
そして、「召喚」は四種の中で一番強力な魔法を創りやすいが、必要な因子量が他の数倍は必要だという。
実際に創れる魔法については自由度がかなり高いようで、魔法の動力源であるはずの魔力さえ必須ではないようだ。
魔力以外のありと凡ゆるエネルギーを利用可能で、使用したエネルギーによっては魔力を使用した普通の魔法とは、また違った効果を発揮することもあるそうだ。
◇
痛みを忘れてアプリに夢中になっていると、先ほどとは比較にならないような衝撃音と咆哮が轟いた。
「クギュルルルーーーーー!」
「グギャァオオオーーーー!」
咆哮がする方を慌てて見てみると、ドラゴンの争いは先ほどよりも激しさを増していた。
二体のドラゴンがお互いにぶつかり合う度に、衝撃破のようなものが起きて強い風が吹き付けてくる。
ドラゴン達は、争いながらも少しずつ此方に近付いているようだ。危機感を抱いた俺は、もう一度なんとか体が動かないかを試してみるが、やはり痛みが強くまるで動けそうに無かった。
打開策を求め、不思議なアプリ〈
[魔法創造]
【SLOT1-(空き)】
【SLOT2-(空き)】
【SLOT3-(空き)】
【SLOT4-(空き)】
【SLOT5-(空き)】
もう一度、SLOT1を押して魔法を創ってみようと、すると『使用出来る因子が存在しません』と表示される。慌てて目次に戻り[因子一覧]を確認するが当然のように何も存在しなかった。
ドラゴン達は争いながらも、少しずつではあるが確実に此方に近付いている。恐怖と焦りから震える指で急いで目次を表示する。
[魔法一覧]
[魔法創造]
[因子一覧]
[因子抽出]
一縷の望みをかけて[因子抽出]を開いた。カメラの様な画面に切り変わる。どうやら、カメラで撮影することで写し取った存在の魔法因子とやらを抽出できるようだ。
カメラをドラゴンに向けて見ると、撮影のためのボタンの上に『抽出不可』と表示された。
ドラゴンからカメラを離し、周りの草や木を抽出出来ないか試してみたが、どれも『抽出不可』と表示される。
「「ゴォォォォオオオオオーーーーーーーー!!」」
その時、一際激しい音と光が世界を満たしたかと思うと、全身に激しい痛みが走り意識が遠のいていった。
—————————
▼《Tips》
〈
主人公が元々の世界を越えることで得た
何らかの条件を達成するたびに条件に相応しい報酬を得ることが出来る。
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