勇者学院の没落令嬢を性欲処理メイドとして飼い、最期にざまぁされる悪役御曹司に俺は転生した。普通に接したら、彼女が毎日逆夜這いに来て困る……。

東夷

第1話 エロゲの悪役御曹司

 バーーーーーーーン!!!


 なんだよ、このクソエロゲ!


 『成り上がり勇者の学院ハーレム無双』ってタイトルが詐欺なんじゃねえかと俺は思わず、机を台パンしてしまった。略して『成勇』、とにかく主人公のライバルキャラのノルドが強すぎて、ストレスしか溜まんなかったからだ……。


 なにが「寂しいお紳士の股間にズッキュンどストライクにございます」(by SACHI HIDE)だよ!!!


 だが、どちゃくそかわいいエリたんのサムネに釣られ、FANSAからフルプライスで買ってしまった以上、途中で投げるわけにもいかず、俺はプレイを再開する。



――――とある勇者学院の闘技場。


 黒い特注の制服に身を包み、眼光鋭く黒髪の青年が、闘技場の石床に剣を杖代わりにして膝をついてしまった金の髪の男子に対して言い放つ。


「勇者の才があるからと期待したが、ただの俺の思い違いだったようだな。ケイン……まったくおまえにはがっかりだ!」


 ため息混じりに落胆の色を見せた男の名はノルド・ヴィランス。年のころは15歳、どす黒い精神を宿しながらも長身かつイケメン、アッカーセン王国の公爵令息だった。


 ノルドは金髪の男の子の攻撃を一切寄せつけず、無傷。一方の男の子は全身打撲に加えて、骨折に裂傷、擦過傷を負っている。


 ケインと呼ばれた男の子は『成勇』の主人公で、ノルドと同級生だった。ケインの意識はあるものの、そのまま床に倒れた。が、ケインはノルドを睨みつけて最後の抵抗をする。


「なんだ、その眼は? 俺に負けたのがそんなに悔しいのか、ああではもっと悔しがらせてやろう」

「ぐぅ……」


 床についたケインの手のひらをノルドは丹念に磨かれた革靴で踏みつけ、煙草の火を消すように踏みにじった。


「平民の分際で俺に逆らった愚かさを知るがいい」

「うぐーーーーーっ!」


 ドゴッと鈍い音が闘技場に鳴り響く。ノルドはケインのわき腹に強く蹴りを放つとケインの身体は闘技場の床をバウンドしながら転がっていった。


「ケインっ!」


 ケインの身体が場外へ落ちそうになったとき、見目麗しい令嬢が観客席から飛び出し、彼を庇うように覆いかぶさった。


 彼女の名はエリーゼ。


 銀の髪が陽の光に照らされると眩いくらいに美しく反射する。その蒼い瞳はいくら深く見つめようとも底まで透き通って見えるようだった。


 王立勇者学院の生徒ならば、みな一律の規則に則った制服を着ているはずなのに類い希な容姿と15歳とは思えぬほど、胸とおしりの発育の良さに男たちは目を離せなくなる。


 王国の者は彼女を見た瞬間祈りを捧げてしまうほどで、産まれながらにして聖女の資質を持ち得ていると言えた。


 エリーゼはすぐさまケインの容態を見て、回復魔法をかけようとした。


「傷つき倒れたる哀しき者を地母神ユルハの慈悲にて癒やしたまえ!」


 だが詠唱途中でケインは彼女の腕を掴んで回復を拒んだ。


「エリー……ダメだ……これはぼくとノルドとの決闘なんだ……危ないから、はぁはぁ……さがってて……」


 ケインの身を案じたエリーゼは立ち上がると禍々しいまでの闘気をまとうノルドへ怯むことなく呼びかける。


 エリーゼの立ち姿を見たノルドは思わず、舌なめずりをする。学院の制服があまりにも扇情的だったためだ。


 ベストほどの長さしかないブレザーに、短かめのスカートでより広がる絶対領域。


 だがそんなことは些細なこと。


 勇者学院の女子の制服のブラウスは短く、みなヘソ出しルック……。そこにエリーゼの美貌が加われば、色香のチート無双と言っても過言ではない!


「ノルド! もう決着はついています。これ以上の狼藉はお止めなさい」

「狼藉? 馬鹿なことを……俺に決闘を挑んだのはそこにいる痴れ者だ。それにケインが負ければ……おまえは……くくく……」


 ――――平民なんざやっちまえ!


 ――――由緒ある学院に平民など不要!


「なにを言うのです! 彼はこの王国を救おうと……」


 観客席からケインを蔑む野次が飛び、エリーゼが観客席を見回し困惑していた。


 そんな野次の合間に、闘技場の入退場口から燕尾服に身を包んだ壮年の男がやってくる。


「ノルドさま、例の件うまくことが運びました」

「そうか。さがっていいぞ」

「は!」


 男は無表情で淡々と必要なことだけをノルドに伝えるとそのまま闘技場から立ち去った。情報を受け取ったノルドは愛剣のガリアヌス蛇腹剣を引きずり、エリーゼのまえに立った。


「エリーゼ、こんなところで油を売っていてもいいのか? マグダリア伯爵は裏で隣国とつながり、あろうことか国王に反旗を翻そうと画策していたのだ。なんと愚かしいことか……大罪人のおまえの両親は明日にでも断頭台で首を落としていることだろう」


「なんですって!? お父さまもお母さまも陛下に反旗など翻すはずが……まさかノルド! あなたが両親を……」


 驚くエリーゼだったが、すぐに目の前の者の策略だと看破する。しかしノルドは悪びれる様子もなく首を左右に振りながら、エリーゼに到底受け入れられるものではない提案をしていた。


「人聞きの悪いことを言う。おまえたちの祖先は国王の忠実なる番犬だったというのに、いまはどうだ? おまえたちの日ごろの態度というものがなっていないのだ。だがエリーゼよ、よろこべ。心優しい俺はおまえの助命だけはしてやろう。ただし俺に奉仕するメイドとしてな」


「あなたに養われるくらいなら、いっそここで私は命を断ちます」

「ほう、それは面白いが、おまえにそれができるかなぁ?」


 エリーゼが太股に隠したナイフに触れたとき、息も絶え絶えにケインが彼女を諭す。


「エリー……いき……ろ……」

「ケイン!」


 エリーゼはぼろぼろと涙を流しながら、意識が薄れてゆくケインを抱きしめたのだった。



 それからノルドの言ったことが本当だと知ったエリーゼはメイド服を着せられ、不安げな表情のまま彼の部屋にいた。


(いやいや、おいおい……エリたん、ノルドに寝取られるのかよ!)


―――――――――あとがき――――――――――

読者の皆さまはじめまして。常連さまちんこわ、否こんちわ! 東夷こと作者です。


【悲報】サポ限近況ノートに本作の触りを「ちょっとだけよ」したら、運営さまから「えっちなのはいけないと思います」されてしまいました。

通報されたというより、多分作者はIAEA並みに運営さまから視姦……ちがった監視されてるんだと思います。


今回は知能指数とか偏差値とか、完全に胎内に忘れてきたものを書きたい。作品が消えないうちに、フォロー、ご評価ヨロシコシコお願いいたします。


作者、性懲りもなく冷やし中華みたいに新連載を始めました。


【ネトラレうれしい! 許婚のモラハラ幼馴染が寝取られたけど、間男の告白を蹴った美少女たちが、俺と幼馴染が別れた途端に恋心を露わにしてくるんだが。】


脳死しない笑えるNTRざまぁラブコメですので読んでいただけるとうれしいです!


表紙リンク↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330667920018002

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