雷鳴の下にて暁を待つ
霧谷
✳✳✳
──天が吼える。荒野の地を割る空の慟哭、草木を濡らす雲の悲哀。それは恵みと呼ぶにはあまりにも強く、強く、生命を穿つ──ああ、また稲光が見えた。 腹の底に響く音は生物が本能的に忌避するもの。
俺は駆け出した、行く先に宛てなどあるはずもない。ただ、この場に居てはいけない、このままではいけないという形の無い焦燥に駆られてひたすらに走った。息が上がりときおり咳き込むがその呼吸の乱れも足を止めるには遠く及ばず、曇天の空の下を走り続けた。
「──……」
雲の切れ間は見えない。
視界は滲む。
呼吸は荒い。
心臓が脈打ち、体中に血潮を巡らせる。
頬を叩く雨が、痛い。
髪を嬲る風が、痛い。
体を冷ます全てが、涙が出るほど生を実感させる。
「──……はは、」
──俺は今日も、雷鳴の下にて暁を待つ。
雷鳴の下にて暁を待つ 霧谷 @168-nHHT
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます