第84話 合宿四週目、ここからは鍛冶と錬金のターン!
モルガンの
「すみません! リブレイズのリオですけど、モルガンさんはいらっしゃいます?」
「中で待ってるよ、場所わかる?」
「大丈夫だと思います!」
私は大きな
「お久しぶりです、モルガンさん!」
「おう、久しいな。すっかり有名になりやがって」
「へへっ! モルガンさんの作ってくれたアサシンダガーのおかげですよ」
「ふん、使ってくれてんならなによりだ。……で、後ろの坊さんは誰だ?」
「キサナです。ウチのクランで僧兵をしながら、錬金術も担当してくれてます」
「ほう、錬金術ねえ。鍛冶も多少イケるクチか?」
「は、はいぃっっっ!!!」
無骨な話し方をされたキサナは、怯えたような声で返事をする。モルガンはわずかに眉をしかめたが、まあいいかと言わんばかりに話を戻す。
「で、今回はまたすげえ注文だな。
モルガンの呼んでいた本は、どうやら超上級者向けの錬金レシピだったようだ。
実は今回の武器製作は、事前にレファーナを通して前依頼をしておいた。
黄昏剣と終末剣、両方の製作をお願いしたい。また一週間で完成させて欲しいので、鍜治才能持ち全員の力を貸して欲しいと。
そのため今日から一週間、私はモルガンの鍜治場を貸し切っていたのだ。
「だが期間中に絶対作れると約束はできねえぞ、こんな高ランクな武器は打ったことがねえからな。……それでも構わねえんだな?」
「もちろんです。モルガンさんでも間に合わないなら、他に頼める人はいませんから」
「は、ずいぶんと高く買ってくれるじゃねえか」
「だってモルガンさん、スタンテイシアで一番の鍛冶師なんでしょ?」
「……ちっ、余計なことは言うモンじゃねえなぁ!」
よく覚えてたと言わんばかりに、モルガンは声を張り上げる。
実際、モルガンの腕は相当なものだ。
レベリング技術の低いこの世界で、鍛冶技術【LV:15】なんて数字はめったに見られるものじゃない。
高ランクの装備を作るためには、それなりの鍛冶技術LVが必要だ。モルガン相当の技術力がなければ終末剣どころか、黄昏剣すら作ることはできない。
だからこそモルガンはある矛盾点に気が付いてしまう。
「だが素材はあったとして、もう一本の黄昏剣はどうする? 終末剣を打つためには、二本の黄昏剣が必要だろ?」
そう。黄昏剣を作るためには、高ランクの鍛冶技術を持った職人が必要なのである。
ここの職人さんのLVでは、まだ黄昏剣を打てるLVに達していない。だが……
「はい。なので黄昏剣はモルガンさん主導で一本、そしてもう一本はキサナ主導で作ろうと考えてるんです」
「……そこの坊さんは、そんなに錬金LVが高いのか?」
「は、はいっ! 一応、錬金術【LV:16】はありますっ!」
――ここで簡単に
鍛冶師とは武器を打つ才能で、縫製師とは防具・アクセサリーを作れる才能である。
そして錬金術師は特殊アイテムの制作、および簡単な鍛冶と縫製もすることができる才能だ。
だが錬金術師が上位互換というわけではない、なぜなら一部の装備は錬金術師に作れないからである。
また装備製作に必要なスキルLVも、専門家である鍛冶師や縫製師のほうが早くから作り始められる。
具体的にいえば黄昏剣は鍛冶技術【LV:12】から製作できるが、錬金術では【LV:16】まで上げないと作れない。
しかも終末剣は錬金術を【LV:20】に上げても作れない。それぞれの才能にしかできない役割が決まっているのだ。
だから私はこのスケジュールに間に合わせるため、キサナに錬金術【LV:16】を取ってもらうように頼んでいた。
そうすれば鍜治場で黄昏剣を二本作り、そのままモルガンに終末剣を打ってもらうことが出来るからだ。
ちなみに必要な素材は以下の通り。
【黄昏剣・ラグナレク(SS)の必要素材】
ギャラルホルン(S)×1
光の石×10
オリハルコン×1
【終末剣・ラグナレク(SS+)の必要素材】
黄昏剣・ラグナレク(SS)×2
鉄のインゴッド×5
アダマンタイト×3
オリハルコン×1
三十層ボスの周回をしたのは、これらを揃えるため。
鉄のインゴッドは三十六層のレベリングで、シュレディンガーから回収済み。アダマンタイトの在庫は切らしているので、またサソリ君から盗んでくるつもりだ。
「なるほど、そこまで考えてきたなら期待には応えねえとな!」
「よろしくお願いします!」
「他に作っておきたい物はねえか?」
「……あー」
そう聞かれて私はぼんやりと考えていた武器のことを思い出す。その武器とは二本目のアサシンダガーのことだった。
私はスキル二刀流を獲得したため、両手にアサシンダガーを持つこともできる。もし二本確保できれば、次のレベリング効率は段違いだ。
だがアダマンタイトの在庫はゼロ。しかも終末剣も一週間で出来るかどうかわからないと言われている。そんな状況での追加依頼は……やめておこうか。
「……いえ、いまのところは大丈夫です」
「そうか? なにか考え込んでたみたいだったが」
「気になさらないでください! とりあえず終末剣の方をお願いします!」
「よし来た! そこの坊さんも、よろしく頼むぜ?」
「は、はいぃぃぃっ!!!」
モルガンがキサナの肩を叩くと、飛びあがってしまいそうなほどビビっている。……う~ん、さすがに少し心配だ。
「キサナちゃん、大丈夫そう?」
「な、なんとか頑張ってみます。私も
「あまり気負い過ぎないでね? 私も空いた時間に顔を見せに来るから!」
私はそう言ってキサナと別れた後、ニコルの飛竜発着場へ向かったのであった。
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