第40話 クラン名決定。いざエレクシアへ!
数日後。フィオナがリビングストンの実家から戻ってきた。
集まりやすくて広いという理由で、今日も私たちは炎竜団ハウスにお邪魔している。
「今からエレクシアに行くのか!? 随分と急だな……」
「本題はそっちじゃないがの。メインはそこでパンケーキをかっ食らっておるスピカの方じゃ」
今日も今日とて、スピカは無限にパンケーキを食べ続けている。あの小さな体のどこに収まっているのか不思議で仕方がない。
「スピちゃんはエレクシアから逃げ出してきた大聖女なんです。本聖堂の扱いに不満があるので、ちょっと先方の代表に話ができればと思って……」
「ふん。その話をまとめるのは、ほとんどアチシの役目になりそうじゃがの。リオはダンジョンに潜ることしか考えておらん」
「そんなこと言わないでくださいよぉ~! それだけ頼りにしてる証拠ですって!」
フィオナが戻ってくるまでの間に、国境を出るための手続きは済ませておいた。
グレイグも先にエレクシアに使いを出し、一番近い町で聖堂関係者と会う手筈になっている。
そこに司教クラスの方が来てくださるようなので、スピカの待遇改善などをお願いする予定だ。
その話が一段落した後、北にある
「どうですか、フィオナさん?」
「どうするもなにも、私はリオについて行くだけだ。……しかし、先方は納得するのか? 大聖女のスピカ殿もダンジョンに連れていくつもりなのだろう?」
「意地でも折れてもらおうと思います。ね、スピちゃん。ダンジョンに入っちゃダメって言われたら、なんて言うんだっけ?」
私が話を振るとスピカはフォークを置き、椅子の上に立ち上がって高圧的に言う。
「それならスピカにも考えがある! よーきゅーがのまれない場合、きさまらの聖地エレクシアは
「ただの脅しではないか……」
フィオナがげんなりとした表情で肩を落とし、レファーナも大きなため息をつく。
「リオもこの調子だから、アチシが人一倍頭を抱えなくてはならないのじゃ……」
「がんばって、レハーナ!」
「……まったく誰のために悩んでおると思うのじゃ」
「でもレハーナもさくしゅされる子供は見たくないでしょ? だったらスピカを助けないと! それにレハーナがスピカを助ければ、きっとさくしゅされてたレハーナの過去もむくわれるよ!」
「いちいち言いまわしが
「スピカの世話係が言ってた! しんたいてきとくちょーが他と違う人は、さくしゅされてた可能性が高いから信者になりやすいって!」
「……アチシも更地に一票入れようかの」
「レ、レファーナ殿!? 気を確かに! 貴女までにそちらへ行かれたら……私たちは快楽主義者をトップに据えた、
「あっ、そんな展開も面白そうですね!」
快楽主義者のリーダーに、
さくしゅの復讐に燃えるのじゃロリ
――女盗賊、ゲーム世界の宗教国家をノリで転覆させる―― coming soon...
「面白そうで革命を起こすような
「や、やだなぁ、冗談に決まってるじゃないですかぁ!」
私が白々しく笑ってみせるも、フィオナのジト目は止まらない。
「しかし、リオ。革命集団でないにせよ、クランの名前はどうなった? こうして国をまたぐことになった以上、アチシらにも呼びやすい名は必要になるであろう」
「あっ、その件なんですけど候補は考えてきました」
「意外と手回しが良いの。……して、その名前は?」
「はいっ! 私たちのクラン名は――『リブレイズ』にしたいと思います!」
結局、私がメインアカウントで結成していたクラン名と同じ名前を使うことにした。
リブレイズ。
この名前は自由・生活・高める、など色んな言葉をひとまとめにした造語だ。
共通の目標はあっても特にノルマや束縛はせず、みんな自由に好きな活動をしていい。ただ助けを求めた時は、出来る限り手を貸してあげよう。そんな思いで名付けたものだった。
「って、勝手に決めちゃったんですけど。どうですかね……」
「私に異論はない。リオらしい、いい名前だと思う」
「右に同じじゃ。アチシにも縫製師としての仕事もあるし、自由にさせてもらうのは大歓迎じゃ」
「スピカもさんせー! じゆーは、いいよねー」
「ありがとうございますっ!」
こうして私が結成したクランは、リブレイズと命名されたのだった。
その後、クランの結成手続きのため冒険者ギルドへ。ランクはパーティを組んでいた時のものが引き継がれ、結成と同時にAクランへと任命。
メンバー署名の時にスピカも名前を書きたがったが、「スピカはリブレイズの
グレイグは結成早々、冒険者協会にSクランの申請をすると言ってたけど……果たしてどうなることやら。
手続きが終わった後。私たちは冒険者ギルドの外で待つ、馬車の前に立っていた。この馬車に乗れば国境を越え、しばらくはニコルへ戻って来れなくなる。
私は見送りに来てくれたガーネットと軽いハグをし、湿っぽくならない程度のごあいさつ。
「リオさん、がんばってきてくださいね」
「はい、必ずガーネットさんに会いに戻ってきますから!」
他にも見送りに来てくれた数人の冒険者に手を振り、私たちの乗った馬車はゆっくりとニコルを後にした。
国境を抜けた先にある町、サンキスティ・モールには四日ほどかかるらしい。
移動中は時間を持て余すかもしれないけど、一緒にいてくれるのは私たちの大好きな人達だ。きっとヒマをするということはないだろう。奈落二十層までの『攻略備忘録』だって書いてないし、移動中に下書きくらいはしておこう。
素敵な仲間を集めてクランを作るという夢は、まさに現在進行中。
東の国でも新しい出会いがあるだろう。私はワクワクした気持ちで、国境の先に見える山を眺めるのだった。
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