【完結】テーブルテニス・ガール

かがみゆえ

前編

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 好きなもの、卓球。

 嫌いなもの、卓球。


 小学1年生のわたしにとって、卓球は好きでも嫌いでもない。

 やってもやらなくてもいい、あってもなくてもいいものだった。


 親の都合で創立100年以上を超える人数の少ない田舎の小学校に来て、そこに【**卓球スポーツ少年団】があった。


 それまで卓球というものに全く面識がなかった。

 姉は興味津々で、『卓球をやってみたい』『この少年団に入りたい』と言った。

 だからわたしも“いい運動になるだろう”と親に勝手に姉と一緒に少年団へ入れられた。


 やったことのない卓球を、私は意味なく嫌った。


「どうして、こんなものをやらなきゃいけないの」


 いつも練習の時はブスっとした顔で取り組んでいた。


 『卓球はどう?』と聞かれた時。

 姉は『難しいけど楽しい』と答えた。

 それに対してわたしは『つまらない、もうやめたい』と言った。


 卓球を始めて数ヶ月もしない内に、わたしは小学1年の部で卓球の大会に出ることになってしまった。


 人数はわたしを入れて4人。

 わたし以外、男の子だった。

 わたしはどうしていいのか分からなかった。

 試合が始まっても、キョロキョロと周りばかり見ていた。

 それでも、対戦相手のボールを必死に返した。


 でも当然、こんなわたしが試合に勝てるわけなく、わたしは全敗した。

 2敗した時点でわたしは残りの試合の審判をすることになった。

 わたしは躊躇った。

 審判ってどうやるのか分からなかったから。

 そしてわたしはやっと気が付いた。


 わたしはただ嫌だ嫌だとばかり言って、卓球のことを何にも知らなかったのだ。

 自分が盛ってるラケットの名前も、ラケットの表で打つ技、裏で打つ技の名前も、サーブをした時に回転のかかった技のやり方も、卓球のやり方さえ何にも知らなかった。

 いや、あまりにも知らな過ぎたのだ。


 卓球のルールが分からないから、審判が出来なかった。

 結局、その時の試合の審判は仲の良かった3つ年上の先輩にお願いして代わりにやってもらった。

 わたしは観客席からその試合をただ黙って見ていた。

 わたしの中には試合で全敗したことよりも、卓球のことを知らなくて審判が出来ないことが涙が出るくらいすごく悔しかった。


 大会が終わったその後、わたしは懸命に卓球に取り組んだ。

 卓球のルール、審判のやり方、ラケット、技の名前……出来る限り覚えた。


 気が付けば、わたしは卓球が大好きになっていた。

 卓球の大会の試合で負けることもあったけど、 勝ち続けた。

 優勝も何度かして、賞状や盾ももらった。


 強かったわけじゃない。

 ただ、運が良かっただけ。

 わたしと同じ年の子は大会にあまりいなくて、少ない人数で試合をしていて、1位2位の順位を争っていただけ。


 弱かったわけでもない。

 男女、年齢は関係なく5人1チームずつ組んで出る大会も年上の人とあたって戦っても勝ったし、3年生の時に3・4年の女子の合同大会も強い子いっぱいいたけど、4位に入賞した。

 その時は準決勝で同じ少年団の子とあたって負けちゃった。

 3位決定戦の時は前に数回戦ったことのある強い子で、初めて戦った時にわたしは1セット取って、あと数本取れば勝つという時に何故かその子に泣かれた。

 わたしはビックリして、どうしていいのか分からずに周りから悪者扱いされてる気がして、そのまま怖じ気づいて負けてしまった。

 そして、3位決定戦でもまた泣かれるのが嫌で、ハラハラしていた。

 わたしは他人に泣かれるのが苦手だった。

 その子は何度か泣きそうになったけど結局泣かなかった。

 わたしは集中出来なくて、情けないがそのまま負けた。

 でも、その4位入賞は私にとって人数が多い大会のベスト記録になった。


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