浅い陽光のシルエット
「これからさ、どうすんの」
「これから……ですか?」
「うん。私が言うのもなんだけど、トップ3名が同時に消えたらその国は終わりみたいなものでしょ。今から戻った所でろくな目に合わなさそうだしさ」
「……」
「今なら、ちゃんと決められるでしょ?」
「……そう、ですね」
「私は、少し旅をしてみたいです。色んな場所に足を運んで、自分の瞳で、それを見てみたい。描いてみたい」
「……はぁ」
「何か可笑しかったでしょうか?」
「いーや、ほんの少しの時間でも、人って変われるんだなって」
「私も、たった数日の間でしたが、貴方と居れて良かったと思います。私だけだったら、きっとここまで来れていない」
「助けになれたんなら良かったよ。この世界についてちょっとは知れたし、何より良い暇つぶしが出来た」
「ふふっ、貴方にとっては暇つぶしですか」
「!初めて笑ったところ見た……明日は雪でも降るのかな」
「そ、そんなに私って無表情でしたか?」
「頬っぺたが殆ど動かない。外骨格?」
「誰が昆虫ですか」
「いいアンサーだ……ツッコミ役に最適だな」
「助けになれたなら良かったです」
「すーぐ人の言葉引用する」
「貴方は…」
「ん?」
「貴方は、これからどうするんですか?」
「これからかー……んまぁ、適当に世界を回ってみるつもりだよ。記憶がどっかに転がってるかも知れないし、なにより私はこの世界に興味が出て来た。出来ることは全部やってみたいもの」
「そうですか……貴方らしいですね」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
「その、あー……」
「私も、着いて行っても、良いですか」
「別に良いけど……本当にそれでいいの?めちゃくちゃ迷惑かける自信あるけど」
「それでも構いません。私が貴方に着いていきたいから着いていくだけです」
「変なの」
「貴方にだけは言われたくありませんね」
「それもそうか」
「そんじゃ、改めて宜しくね。リムちゃん」
「こちらこそ……えーと」
「んー?」
「そう言えば、なんとお呼びすれば良いのかと思いまして」
「……え、もしかして私の事これまで二人称で呼んでない?」
「貴方、や、彼、としか」
「なんで気が付かなかったんだ……呼び方かぁ、なんでも良いけどな。適当に名前付けて」
「貴方らしいですね」
「なんでも適当だって言いたいのか」
「ふむ…名前……」
「ペットに名付ける感じでさらっとね。文句言うつもりもないから」
「愛称の様なもので良いのでしたら…そう、ですね」
「ノウン、と言うのはどうですか?」
「ノウン……え、unknownだからって事?意味真逆だしあんちょくー」
「文句じゃないですか」
「ごめんごめん、良いんじゃない?オリジナリティあって」
「気に入っていただけたのなら幸いです。それに」
「これからこの世界の事を知っていくんです。今は白痴であっても、いつかは、彼の賢者の様になれると思います」
「彼の賢者…って、誰?」
「賢者ノウンは北ハウスロンドによって生まれ落ち生まれながらにして《全知》のスキルを授かった特異的な人物であり産まれて直ぐ言葉を話した事が逸話では有名です。しかしその全貌は未だ謎に包まれており一説では御伽噺の登場人物だとも噂されていますがそう断言するにはこの世界に彼の遺したものや手掛かりが多く発掘されています。近年では」
「あーごめん私が悪かった止まってくれ」
「…ふふ、冗談ですよ。こちらこそ宜しくお願いしますね。ノウン」
「よーし、パーティ結成だ!次は何処に行こうか!」
_____________
少しだけ盛り上がった土の横には二人の影があった。
それは優しく揺らめき、遠くを見つめて語り合っている様だった。
直に朝日は昇っていって、いつかその影が暴かれる日が来るのだろうか。
少なくとも、今はそうじゃない。
影が山から降りていくと、土に刺さった一本の剣があった。
影でもわかる程にごてっとした装飾の多い、そんな剣だった。
剣もまた暴かれる日が来るのだろう。
土もきっと暴かれるんだろうな。
だけど今はそうじゃないから。
夜が明けていく
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