闇龍の最後

スライムって良いよね。

基本どの物語においても序盤の雑魚キャラ。壁に埋まる奴を除く。

世界にとっての分解者だったり、微生物的な役割だってある。

バリエーションは豊かで、あらゆる可能性を秘めている。ものによっちゃ魔王より強かったりとか。ボーナス敵だったりとか。

何よりあのもちもちボディは見るものを惑わす。たまらねぇ


振るった光は無数のスライムを切り飛ばし、光と共に消滅させる。

一つ

二つ

三つ


世界から消え失せた私の肢体を認知出来るものはここに居らず、ただただ跳ねるだけのゼリーは数十分もすれば根絶した。


世界から消える方法、世界を騙す方法…んー特にこれといった語句が思いつかない。

取り敢えずなんか消えるやつって事で覚えておこう。


あれだけ跳ねててぴちゃぴちゃうるさかったのに、いざ何も無くなるとそれはそれで寂しくなってしまう。

自分でやっといてなんやねんって感じですが、まぁいいや。

眼前に広がるのは凡そ10m程はある大きな門だった。

開くかな、ちょっと押してみる。


がががががッ、がん


そんな音を立てて門が開いていく。意外と簡単に開くのね。



^^^^^^^


食らいつくけど食らいつくけど…我の飢えは収まらない。

何時かの大戦。ケルオム神国の討伐隊に敗れた我は、彼等が禁足地と呼んだそこへと封じられた。

この白色の光に包まれた部屋は、我の中の闇を対消滅させ、力を奪っていく。

極めつけは飲まされた聖なる鎌であった。


神鎌アガルマオート


神の使いによって渡されたとされる聖なる大鎌。それが我の身体の楔となり、この場所へと閉じ込めていた。


しかしそれも今宵までの話だ。今、打たれた神鎌は体内に溜め込まれた闇によって姿を変えた。最早それは楔としての役割を果たさぬ。

外に蔓延る光の番人は消えてなくなっている。


さぁ目覚めの時だ。


我が四足を立て、翼を広げる。光の部屋の魔力が尽きるその時まで、暴れたもうぞ


がががががッ、がん


間抜けな音がして首をそちらへ向けると、どういう訳か忌々しい封印の門が開いていた。


『何者だ』


返答は無い。門の裏にでも隠れているのか?


『隠れようと無駄である。此処が何処かは知っているだろう?』


翼をはためかせ、闇を充満させた。しかし直ぐにその闇は霧散し、光の部屋は煌々と煌めくだけだ

ふむ…大方力を取り戻しかけた我を封じ込める為の派遣隊か。

ならば丁度良い。腹が減っていた所だ。


『良いだろう、来るがいい。我に仇なす不届き者が!!』


咆哮。


闇が一帯に充満していく。それと同時に我は爪を地に突き立て、掘り返すようにして門に腕を振りかぶった。

地を這う爪撃は門へと食らいつき二度三度続けて門へと這い回る。隠れているのならば既にお陀仏だろう


暫しの沈黙が流れた。どれ死体でも確認しに行くとするか。

思い腰を上げ、門へと向かおうとした時、

我が闇を這いずる尾へ痛烈なる光の奔流が流れた


『グァアアァア!!!』


直ぐに後ろへと振り返るが、そこには何も無く、切断された尾は光に包まれ消えゆき、静寂だけが残った


『ァア…何者だ!!?』


次は左脚だ、振り払う前に到達する光は、神経を焦がし、最早言う事を聞かない。

最低限、闇の魔力を形にし、補うように作るが、それすらも出来た途端に消え失せる。


『一体…一体何が』


ケルオムの兵器か…はたまた神の使者か。

暴の化身である我を愚弄し、このまたとない機会をふいさせるのか…ッ!?


『我は…ッ、我は闇龍ファヴニルであるのだぞ!!』




「知らないよ声でっかいなー」


その声と共に、光が我が脳髄へと注ぎ込まれた

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