秘密2
連喜
第1話
誰かに聞いてもらいたいことがあります。
どこから話し始めていいかわからないけど、何年か前の話です。
僕は一戸建てで一人暮らしをしていました。場所は関東です。両親が早くになくなってしまい、姉も家を出ていたので、親から相続した古い田舎の家にそのまま住んでいました。近所の人は全員昔から知り合いで、隠し事なんてできないような土地柄です。
僕は二十代の会社員で勤め先は中小企業。ブラックではありませんが、給料は安く、夢も希望もない職場でした。そこで営業をしていました。
タイプとしては世間でいうところのキモオタで、趣味はゲームとアニメです。彼女がいたことはありませんでした。好きなタイプは小学生くらいの女の子ですが、世間的に許されるものではありません。ですので、アニメや漫画を見たり、頭の中で想像するだけでした。
しかし、大人のお店などでは満たされないモヤモヤが募り、長年の欲望が今にもはち切れそうでした。犯罪を犯しそうになるのを、日々抑えているような状態でした。
そんなある日、歌舞伎町に行くと家出少女がいっぱいいるというのを知りました。マスコミで騒がれるもっと前のことです。
そこを知ったきっかけはネットの口コミでした。僕ははやる気持ちを抑えながら、週末に新宿までナンパに出かけました。ナンパと言ってもお金をちらつかせればいいので、面白い話をするとか、イケメンである必要もありません。
僕は行き場のない若い子たちが集まって、地面に座っているのに声を掛けました。その中に、一人びっくりするほどかわいい子がいたからです。まさに、ハキダメの鶴でした。
「大丈夫?」
「大丈夫って何が?」
その中でとりわけ不細工な女の子が笑いながらいいました。他の子たちも一緒に笑っていますが、馬鹿にしてる感じはしませんでした。
時間は深夜1時くらいです。
「終電逃した?」
「うん。タクシー乗って帰るからお金くれない?」ブスな子が言いました。
「でも、帰る気ないでしょ」
僕はキモオタですが、実は子どもと話すのは慣れていました。大学で保育科に行ったからです。僕は成績が割とよかったのですが、そんな所に進学したのは、子どもたちとのフィジカルなコンタクトを期待したからです。オムツを替えたり、トイレを手伝ったりしたかったのです。大学卒業後も出会いを求めて、子どものいる集まりでボランティアをしたりもしました。
子どもたちから僕に対する感想は「いい人」だったと思います。子どもからは慕われましたが、男ばっかりでした。女の子は小さい頃からイケメンが好きです。
僕は女の子たちとしばらく喋りました。それで、一人ひとりどこから来たかと、年齢を聞きました。一番かわいい子は十二歳でした。
「一緒にお茶しに行かない?」
僕はかわいい子に聞きました。誘ってもいないのに、他の子が「いいよ!」と言いました。僕はみんなを引き連れて、夜中もやっているファミレスに行きました。仕方なく、全員に食事を奢りました。みな空腹でガツガツ食べていました。僕はかわいい子の隣に座って、色々話しかけました。本当はダイレクトに金額を聞けばよかったかもしれません。でも、仲良くなる過程も楽しみたかったのです。
かわいい子はニアちゃんという名前で家は埼玉でした。アイドルみたいにかわいくて、今までよく無傷だったと思うくらいでした。よくある訳あり家庭出身で、親から暴力を受けていたため、家出したそうです。すでに半年も経っていました。日本のような監視社会でそのようなことが可能だったのが今でも信じられませんが。家出してからは知り合いの伝手で、パパ活をして食いつないでいたそうです。
僕たちはそこの店には朝までいましたが、眠いと言って寝ている子もいました。僕たちは、店が朝にいったん閉店するのに合わせて、外に出ました。
そして、かわいい子に家に来ないかと誘いました。その子は「いいよ」と言いました。みんなに僕と一緒に行くと言わないように頼みました。彼女は承諾しました。
僕はみんなにカラオケに行けるくらいのお金を渡しました。それっきり、会ったことはありません。
***
僕は女の子を家に連れて帰りました。あまりにもかわいいので、すれ違った人はキモオタが個撮モデルの子を連れて歩いていると思ったことでしょう。
ニアちゃんが可愛すぎて目立つので、途中の駅で降りて洋服を買ってあげました。しばらく僕の家にいることに決まっていたので、部屋着とか必要なものは全部買いました。ニアちゃんは新宿のロッカーに荷物があると言っていましたが、全部新しい物を買ってあげると言って諦めさせました。
その後、家に連れて行って、どうしたかはご想像にお任せしたいと思います。ニアちゃんは僕にすごく懐きました。猫みたいにかわいく甘えてきました。トイレに行くときもついて来るくらいずっと一緒にいました。まるで、漫画みたいな展開です。
【キモオタ、アイドル級の超かわロリっ子に溺愛される】
うまく行きすぎてニヤニヤが止まりませんでした。
***
月曜日の朝、僕が会社に行くとき、ニアちゃんは泣きました。
「嫌だ~!行かないで!」
「大丈夫。仕事が終わったら飛んで帰ってくるから」
「いやだ。会社休んで!」ニアちゃんは僕にしがみついて離れません。
「そんなことしたら、クビになっちゃって、ニアちゃんの欲しい物を買ってあげられなくなっちゃうよ。えへへへへ」
かわいい女の子にそんなに慕われるなんて夢のようでした。二十分くらいごねていました。
「じゃあ、通話アプリをずっとつないでて」
「うん。わかった」
俺はニアちゃんにチューをして家を出ました。駅までは言われた通り、歩きながらイヤホンでずっと会話をしていました。
「今日は何するの?」
「うーん。昼寝」
「えー。夜寝れなくなっちゃうよ!」
「でも、寝れないし」
夜は外で過ごしていたから、すっかり夜型になっているらしいのです。夜中も起きてられたら僕が困ります。
僕の家は駅から十五分くらいでした。気が付くと目の前に駅が見えて来ました。
「じゃあね。もう、電車乗るから」
僕が電話を切ろうとすると、ニアちゃんは泣き出してしまいました。
「いやだ!ずっとつないでおいて!」
「無理だよ…仕事だし」
「そんなこと言って女の人と浮気するんでしょ!」
「まさか。絶対大丈夫だから」
僕なんて先週までは彼女がいたこともないのに、浮気の心配をされるなんて…。急にモテ始めて僕はニヤニヤしてしまいました。今思うと、最初の頃は余裕があったと思います。その後は、僕の生活はなし崩し的に崩壊していくのですが。
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