第28話 土探し

「瓦? いいよ作ってあげる。色々と手伝ってはもらうけど」


 女性陶芸家の『ねこにゃん』がそう言った。


「何をすればいい」

「まずは土ね。瓦に適した土探し」


 色んなフィールドに行かないといけないらしい。

 土って言っても粘土だよな。

 粘土掘りは小学生の頃やったことがある。

 山に入って、崩れた斜面とか適当に掘る。

 てか、粘土が露出しているポイントがあったりするんだよ。

 かなりご都合主義だが、実際の山もそんな感じだから。


 崩れた斜面を探す。

 簡単に見つかった。

 粘土もある。


 鉄鉱石と違って粘土を採取したといってモンスターが寄っては来ない。

 ただ、粘土が使えるかどうか試してみないと。

 こればかりは色々な場所を探さないといけない。


「敵だ」


 鳥型のモンスターが襲ってきた。


 『ブラックホーク』か。


「【Pythonパイソン 無限投擲.py】」


 くそっ、なかなか当たらない。


「この鳥頭野郎、降りて来い【回転斬り】」


 ローリンもストレスが溜まっているな。


「行くよ。【われは内包する、魔法規則。水弾百撃生成の命令をレベル30の水魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものを連弾せよ。百連水弾】」


 向日葵の百裂水弾が炸裂。

 当たったようだ。

 こういう敵は範囲攻撃が有効だな。


 よし、作るか。


for i in range(0,100,1): # 100回ループ

  print("【われは内包する、魔法規則。火球生成の命令をレベル1の火魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものをランダムに飛ばせ。火球】")


  for j in range(0,100,1): # 100回ループ

    print("【われは内包する、魔法規則。かの者は自分。魔力吸収の命令をレベル1の吸魔魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にかの者の名前を渡せ。極小吸魔】")



 やってみた。


「きゃあ」

「【回転斬り】」

「ちょっと」


「ごめん」


 ランダムだと明後日の方向に飛ぶ。

 当然味方にも。


「味方に撃たれるとは思ってなかったわ」

「ごめんて言っただろう」


for i in range(0,100,1): # 100回ループ

  print("【われは内包する、魔法規則。火球生成の命令をレベル1の火魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものをほうき状にランダムに飛ばせ。火球】")


  for j in range(0,100,1): # 100回ループ

    print("【われは内包する、魔法規則。かの者は自分。魔力吸収の命令をレベル1の吸魔魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にかの者の名前を渡せ。極小吸魔】")


 こんどこそ。

 うん、範囲を絞って範囲攻撃になった。

 これなら当たるぞ。


 一羽撃墜。

 しかし、そらの敵は旨味がないな。

 倒すと空中でアイテムをドロップするから、拾いに行くのが難しい。

 目を離すと場所が分からなくなる。

 回収率が下がるのは勘弁してほしい。


 山の色々な所で粘土を採取した。

 ねこにゃんに渡すと。

 色々な土で作った猫の置物が出来上がった。


「これが良さそうね」


 小麦色の置物を手にそう言われた。

 あとは待つだけだ。

 数日経って、瓦が出来上がった。

 出来上がった瓦には猫の姿が刻まれてた。

 めんどくさいだろ。

 でもそれが職人のこだわりか。

 そのねこの姿が一枚一枚違うのには驚いた。

 どんだけ手間掛けているんだよ。


 土を屋根の上に敷き詰めて、丁寧に瓦を置いて行く。

 置くのも案外難しいな。

 何度かやり直し曲がったところもあるがなんとか完成。

 次は壁だ。


 漆喰を塗らなきゃならない。

 原料は消石灰か。


 石灰石を加熱。

 粉にする。

 そこに水を加えればいいらしい。


 石灰石なら鍾乳洞フィールドだな。

 鍾乳洞はサッドへの道の途中にある。


 漆喰職人なんていないよな。

 ちらっと、NPCの雑貨屋で買おうかなとも思った。

 ただ、値段が高いんだよ。

 そして品質が悪い。


 作る楽しみもゲームの醍醐味だから、そうなるのは分かる。

 俺も無粋なことは言わない。

 色々と作ってこそゲームだ。

 さあ、鍾乳洞フィールドに行こう。

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