第6話 ピクニック

「ダイブイン」


 何を成すとも1行エディタじゃ不便だ。

 ネットを漁ったがあの入門サイトしか出て来ない。

 Pythonパイソン時代遅れで使っている人はいないようだ。

 誰かが作ったプログラムには頼れない。

 一からやるしかない。

 もっとも、簡単なのなら誰にでもできる。


 エディタの改良はダイブインできない時間にするのがいいだろう。

 餓死とか低血糖とか脱水症にならないように、連続してダイブインできるのは3時間だ。

 1時間の休憩を挟んで、再ダイブできるようになる。


 ゲーム内での時間は貴重だ。

 テキパキ行動しないと。


 火種の魔道具で、火魔法が使えるようになったのなら、水が湧き出る水筒はどうだ。

 やってみるか。


print("【われは内包する、魔法規則。水球生成の命令をレベル1の水魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものを生成せよ。生水】")


 これでコップ半分ぐらいの水が出来る。


s="【われは内包する、魔法規則。水球生成の命令をレベル1の水魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものを生成せよ。生水】"

print(s)

print(s)


 これでコップ1杯の水だ。

 マクスダクトにメールを送る。

 マクスダクトはダイブインしてないようだ。

 返事はない。

 これを1000個作って大丈夫だろうか。

 ええい、決断だ。

 生水の魔道具を1000個作ってしまった。

 魔石代は有り金叩いての大銀貨3枚。


 水筒ならがわが要る。

 それは誰かに作って貰わないと。


 俺は水筒を買うことにした。

 露店が立ち並ぶ一角を観察しながら歩く。

 水筒はあった。

 だがすでに魔道具が付いている。

 考えることは一緒か。


「この水筒で水を飲むと水魔法が生えたりする?」

「そうなりゃ。ウハウハだけど、そういうことはないみたい」


 しまった、魔道具1000個の在庫を抱えてしまった。

 どうしよう。


 マクスダクトから返事のメールがきた。

 水筒なぞ売れん。

 終わった。


 俺は魔道具付きの水筒を買った。

 現物を見ないことには始まらないからだ。

 改良点が見つかるかも知れない。

 飲んでみたり色々としたが、どうにもならない。


 はぁー、俺ってついてない。

 みんなが着々と成長している間に俺は大量の在庫を抱えてアップアップか。


「どうしたの。浮かない顔して」

「向日葵か。生産でぽかやらかした」

「疲れているような表情ね。ピクニックでも行く?」

「ピクニック?」


 それも良いかも。

 ピクニックでも行くか。

 このVRMMOは脳に繋いでいるので、味も感じられる。


 疲れているんだ。

 だから失敗するんだ。

 美味い物食って気分転換したら何か良いアイデアが浮かぶさ。


 露店でサンドイッチを買って、街の外に出る。

 周りのスライムを討伐して疑似セーフゾーンを作る。

 草に座って、サンドイッチをぱくつく。

 食い終わった俺はごろりと横になった。


 気持ちいい風が頬を撫でる。

 そして鼻の頭にぴょんとバッタが乗った。

 ええと『イナーゴ7 レベル1』とウインドウが出た。

 こいつめ。

 いい気分のところを台無しにして。

 こうしてやる。

 水筒の中にイナーゴを閉じ込めて、水を出した。

 水攻めだ。


 視線を感じたので見るとイナーゴの群れがいた。

 えっ、襲い掛かってくるんじゃ。

 こうなったら水攻めじゃ。

 水筒に次々とイナーゴを放り込む。

 一杯になったら、水と一緒にイナーゴを捨てる。

 噛まれたけど死ぬこともなく群れを退治できた。


 向日葵はそれを見て笑っている。


「良かったね。笑顔になっているよ」

「うん、童心に帰ったような気がする」


『水魔法スキルを獲得しましたが、全属性魔法スキルがあるので無効化されます』


 とメッセージが。

 えっ、なんて。

 水魔法を得たのか。

 で全属性魔法で無効化されたと、他の人が同じ事をしたら、水魔法を獲得できるのか。

 これは凄い情報だ。

 やった、水生成魔道具1000個がはける。

 がわの水筒はマクスダクトに頼もう。


 この情報をマクスダクトに教えたら。

 俺のクランで水筒を作りまくるとの返事が。

 マクスダクトに魔道具1000個が売れた。


 土と風で殺す魔道具は思いつかない。

 土は水筒みたいなので生き埋めにしたらいいのかな。

 土が詰まると取り出すのは厄介だ。

 普通に石弾の魔法の方が良いかもな。


 風は考えつかない。

 まあいい。

 一息つけたからよしとするさ。

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