会社を首になった男、VRMMOの初期ボーナスで当たりスキルを引き当てる
喰寝丸太
第1話 ダイブイン
俺は
最近は運の悪さに見舞われている。
重要な書類データを別のデータで上書きしてしまうは、コードに足を引っ掛けて、みんなのパソコンの電源を切ってひんしゅくを買うは。
とにかく色々なことに運がない。
「君は今日限りで首だ」
「そんな、頑張ってきたのに」
「ミスが多過ぎるんだよ。カバーできないからなんとかしてくれと言われてる。私もこんなことを言いたくはないが正直お荷物なんだ」
「分かりました」
俺って注意力散漫なのかな。
疲れているのかも知れない。
これからどうしよう。
駅前のビルの電光掲示板にVRMMO『
よし、これで飯を食っていくか。
昔からプロゲーマーに憧れていたんだよな。
そうと決まれば、善は急げ。
100万円を超える、VRポッドを買いパス・オブ・ホープのソフトを買った。
パッケージには、初日ログインにはボーナスがあると書いてある。
何でも好きな道具をポッドの中に持っていってログインするとスキャンされて、AIが似たような道具を探し出し、固有武器をデザインしてくれるらしい。
たとえば玩具の剣を持ったまま入ると、剣が固有武器としてプレゼントされる。
固有武器は壊れないという特徴と、スキルがひとつ付与されている事と、成長するという特徴を持つ。
プロゲーマーになるなら普通のことやっても駄目だ。
俺は考えたあげく、昔、父が使っていたノートパソコンを持っていくことにした。
インテリジェンスアイテムを狙っているのだ。
助言があれば攻略は容易い。
取説チートというわけだ。
何日かしてVRポッドが届いた。
ワクワクしながらゲームスタートの時を待つ。
その日がやってきた。
VRゲームにログインすることをダイブインというらしい。
直訳すると集中するの意味だが、潜って入るという和製英語だ。
「ダイブイン」
VRポッドに横たわり唱える。
視界はグリッド線が引かれた空間に切り替わった。
『名前を入れて下さい』
「ええと、エース」
『既に使われてます』
「トップ」
『既に使われてます』
「ナンバーワン」
『既に使われてます』
「バーテックス」
『了解しました。魔法属性を選んで下さい』
「何があるんだ?」
『最初選べるのは、火、水、土、風、幻影、治癒、雷、付与、全属性の9つです。属性の説明を致しますか?』
「いやいい。大体分かるから。全属性が良いな。お得感がある」
『全属性、了解しました。繰り返します。お名前はバーテックス。魔法属性は全属性。よろしいですか』
「オッケー」
『貴方に希望の道があらんことを』
視界が切り替わり、街の広場に立っていた。
何人もいるが、ほとんど全員が同じ服を着ている。
この服は初期装備というか下着みたいなものなんだろ。
俺は他の人達が手に武器や道具を持っているのに気づいた。
あれっ、俺は何にも持ってないぞ。
服のポケットとかないか調べるが、それらしき物はない。
「ストレージ」
ええと入っているのは銅貨30枚だけだ。
くそっ、運の悪さがここにも出たか。
まだ慌てる必要はない。
みんなレベル1だからな。
固有武器がないぐらいなんとかなるさ。
まずはパーティを組む事からだな。
ええと、事前に読んだ取説によれば、冒険者ギルドにパーティ募集の張り紙をすればいいとある。
人の流れる方向に進んで冒険者ギルドに辿り着いた。
冒険者ギルドは凄い人混みだった。
人をかき分け、パーティ募集の紙を見ると、戦士募集、魔法使い募集などいろいろとある。
俺はまず役割を決めないといけないらしい。
戦士、武器がないのに?
格闘家という手もあるが、そういう人は見たところ鉢巻とか、爪とか、道着とかを身に着けている。
あれは固有武器だろうな。
固有武器には最初は必ずひとつスキルが付与してしてあるとのこと。
この時点で俺は出遅れている。
それに俺は武道をやったことがない。
プレイヤースキルも影響すると取説に書いてあった。
なら魔法使いか。
全属性だものな。
魔法使いになるしかない。
魔法使い募集の張り紙を剥がすと、募集を出した人の上にアイコンが出た。
俺はそこに急いだ。
なぜなら、早い者勝ちだと思うから。
「魔法使いの募集を見ました」
「属性は?」
「全属性です」
「それはなんというか」
「なんですか?」
「魔法の属性はレベルがあって上がるんですが、全属性はこれがレベル1のまま上がらないんです。剣士とかならそれでもいいんですが」
ベータテストの情報をもっと詳しく見とけばよかったか。
なんてこった、やっちまった。
俺は詰んでる。
「お手数を掛けました。募集は取り消して下さい」
「お気を落とさずに」
それからいくつものパーティに声を掛けたが、どこにも入れて貰えなかった。
くそう、こうなったら生産職しかないのか。
生産職も大工道具、調理道具など色々と手にしてる。
仲間には入れて貰えそうにない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます