伸手
久志木梓
一、残日
ひれ伏したる先にまします
ご嘆息ののち、
「
とおっしゃる。
「落つか、落ちぬか、わからぬ」
――ああ、おいたわしや!
宦官は泣いた。
泣くのが、礼である、忠である。帝が
宦官はかく考えて、満身の力をふりしぼり、詫びながら身も世もなく泣き出したるを、
「よい」
帝は制せられて、
「体に
とおっしゃる。
慈悲深き
――ああなぜこのような
と宦官はもう一筋だけ落涙した。
帝は宦官の捧げたる膳へ、
伸ばされたる御手は、立ち枯れし木が如く、痩せ細り、乾き、荒れている。帝は、まだお若い。御年いまだ二十七にして、その御手は、
御手の伸ばされたる先の膳には、椀が一つ載るのみである。
椀は、汁をたたえている。汁は、残り少ない塩を溶かした、ほとんど
帝は椀をお持ちになり、なかの鼠の汁物へ
「ありがたい」
とわずかな
宦官はいまいちど
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます