小説家に聞いてみた

秋宮さジ

質問1 あなたにとって執筆とは?



「あなたにとって執筆とは?」

「自己表現、かなあ……」




「あなたにとって執筆とは?」

「ストレス」




「あなたにとって執筆とは?」

「え? んー、普通に趣味ですね……。あれ、この回答つまんないですか?」




「あなたにとって執筆とは?」

「飽くなき欲望を発散する手段であり、そのものが欲望になり得るもの」




「あなたにとって執筆とは?」

「決して逃れられない呪縛」




「あなたにとって執筆とは?」

「三大欲求の一つですかね~。たはは」




「あなたにとって執筆とは?」

「金儲けの手段だろ。テキトーに書けば売れるし」




「あなたにとって執筆とは?」

「一日の〆っすね」




「あなたにとって執筆とは?」

「自分が見聞きしたことをメモしておくようなものだね」




「あなたにとって執筆とは?」

「神々の遊びに近いのかもしれない」




「あなたにとって執筆とは?」

「三度の飯より大事なこと」




「あなたにとって執筆とは?」

「神聖な行為だよ。例えば、座禅、礼拝……、うん、そんな感じだ」




「あなたにとって執筆とは?」

「自分との対話」




「あなたにとって執筆とは?」

「逆に聞くけど、この質問って今まで何人にしてきたの?」




「あなたにとって執筆とは?」

「デビューするための手段。一日に一万字は書かないと」




「あなたにとって執筆とは?」

「山あり谷あり。ほら、スランプってやつだぜ。今まさにそれにぶつかっててな」




「あなたにとって執筆とは?」

「排泄」




「あなたにとって執筆とは?」

「歯磨きの次に欠かせない、かな」




「あなたにとって執筆とは?」

「宿命さ。ぼくは物する為だけに生まれてきたんだ」




「あなたにとって執筆とは?」

「僕のもう一つの人格が出てくる時間」




「あなたにとって執筆とは?」

「凄く心地が良いものだよ。うん」




「あなたにとって執筆とは?」

「虚無。書いては消しての繰り返し。何も為せはしない」




「あなたにとって執筆とは?」

「一度やったら一週間はしたくないもの」




「あなたにとって執筆とは?」

「初めての地に遠出している感覚、分かるかい? ほら、君も行ったことあるでしょ。修学旅行とかさぁ。ああいう感じ」




「あなたにとって執筆とは?」

「その質問に回答してきた人ら、自己陶酔し過ぎでしょ」




「あなたにとって執筆とは?」

「もう一つの世界と繋がるための手段」




「あなたにとって執筆とは?」

「んー、何だろうな……。考えたことなかったなぁ。生活の一部って感じ」




「あなたにとって執筆とは?」

「自分が天才なんだと再認識できる時間」




「あなたにとって執筆とは?」

「自分自身が世界に入って、登場人物の応酬を見聞きして、それを文字にしてるだけなのよねぇ。別に全然、自分で考えたわけじゃねーのよ。はっきし言って」




「あなたにとって執筆とは?」

「はぁ……そういう質問をしてくる連中と、建設的な会話をした試しがない」




「あなたにとって執筆とは?」

「憧憬の体現、的な?」




「あなたにとって執筆とは?」

「ただの暇つぶし。ウケたりするわけじゃないし」


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