第44話 天の陽光は揺蕩い笑う
内界中心部
会社や役所が集まる、都市の中枢が集中した場所
そこは今地獄とかしていた。
至る所が燃えており、いつもなら多くの人で賑わっている広場には人の気配なんて全くない。
いや、いなくなったという方がいいのだろうか。
彼は新宿の政治家たちを皆殺しにした後都市へと繰り出し、建物を燃やし回り、彼に出会った市民は無差別に燃やされ、駆けつけた異能大隊の超能力者たちはなすすべなく殺されていった。
今も広場には彼らだったものの焼け跡が残っており、焦げた臭いがあたりに立ち込めている。
そんな中、
そこに烈火が現れる。
その表情は怒りに満ちており、ヘイルムに向かって殺気を放っていた。
それでもなおヘイルムはいつもと変わらない佇まいでその場から立ち上がった。
「意外と速かったな。俺の残りの仕事はお前を殺すことだ。北条烈火」
そういいながらヘイルムは後ろにある大きな二つのビルに視線を向ける。
その二つのビルは新宿中央都市役所と異能大隊本部。
この新宿の中枢をなす重要な建物だ。
そこが今燃えている。
「あのビルの中にいた人たちはどうした」
烈火はあの建物を燃やした張本人であろう目の前にいるヘイルムに尋ねる。
あそこにはこの都市を運営していた多くの政治家、そして多くの超能力者の警備員がいたはずなのだ。
「燃やしたよ。下っ端は知らないけどふんぞりかえっていたお偉いさんはビル燃やす前に殺したから生きていないよ」
都市の中でも優秀な超能力者や銃が配備されていたはずだが、目の前の彼にとっては障害にすらならなかったのだろう。
「お前が首謀者か」
「いいや、俺は実行犯のリーダーと言ったところかな」
「そうか…ならお前を倒して首謀者とやらについて聞かせてもらう」
「まさか、俺に勝てるとでも思っているのか?俺はお前はそんなに愚かじゃないと評価していたんだが」
ヘイルムは自分に勝とうとしている烈火に対して呆れの表情を向けた。
烈火についての情報をある程度得ているヘイルムは、彼が愚かではないことは分かっていた。
それでも自分たちの仕事を妨げる存在になるのではと注意していたが、まさか正面からぶつかってくるとは思ってなかったのだ。
烈火もまたヘイルムに対して怒りの感情を持っているが、同時に冷静に相手の力量を測っていたため相対した時から分かっていた。
自分はヘイルムには勝てないと。
(戦ったら確実に俺が負けるだろう。……でも)
「ここで下がるという選択肢は俺にはないんでな」
自分がここに来るまでに異能大隊の超能力者たちが彼に挑んで負けたことは周りにある死体を見ればわかる。
もしまだ戦える超能力者がいても足手纏いになるだろう。
つまりヘイルムを相手にできるのは自分しかいない。
まだ住民が安全な場所まで避難しきれていないはず。
だから、そちらに意識を向けないために烈火は自分の身を犠牲にして時間を稼ごうとしていた。
「そうか、なら俺を倒してみろ
「
ヘイルムと烈火、二人の熱が広場一帯に広がっていき、そして衝突した。
〜〜〜〜〜
二人の戦いが始まって少し時間が経ち、戦いの場を広場から市街地へと移していた。
「《
烈火が放った炎の針がヘイルムに向かって放たれる。
「《コールフラワー》」
ヘイルムは持っているライターを着火させて火を付けるとその火が一瞬で消える。
すると、彼の近くにソフトボールサイズの火の玉が形成されると《
その衝撃で烈火の
「《ヒートバースト》」
「っ!くそ!」
烈火は急いで柱の後ろへと身を隠すとそこにヘイルムの
火炎放射のように放たれた
「《コールフラワー》」
「っ!」
烈火の目の前に火の玉が形成される。
彼は急いで避けようとしたが位置が近いこともあり爆風に煽られてしまう。
そして、そのままヘイルムの前へと戻ってきてしまう。
(時間が経つ毎に火力が上がっている。どういうことだ)
《コールフラワー》は戦い初めの時は小さな爆発しか起きず、《
《ヒートバースト》も初めは簡単に相殺ができており、烈火の有利に進んでいた。
だが、時間が経つ毎にヘイルムの火力が上がっていき、今となっては《コールフラワー》は《
「やっとあったまってきた」
「どうなってやがる」
初めは存在力を引き上げているだけと考え、早いうちに
「なにか策があるのかと思ったが、自己を犠牲にした囮だとは。よほど俺を都市から離したいか。…まあいいか。………
「っ!?《
烈火は何か分からないがヘイルムがやったことが自分にとって最悪なことであると感じ、彼に向かって最大火力の
「無駄だ。もうお前の炎は効かない」
しかし、ヘイルムには一切効いてなかった。
「なんだその存在力は」
「
烈火は初めて感じる巨大な存在力に目を見張っていた。
「俺とお前、同じ【炎】の適性を持っているが方向性はまるで違うな。お前は炎の
ヘイルムは両手の掌に炎を形成する。
右手の炎がゴウゴウと激しく燃えているのに対し、左手の炎は静かにゆらゆらと燃えていた。
この二つと炎は烈火とヘイルムの
「
ヘイルムは両手の炎を消した後、ライターに火を付ける。
そして、その火が消えると同時に反対側に手のひらに火が形成される。
「この
「っ!」
「《バーミリオン・サンナ》。『相手に説明する』『三分だけしか熱を溜め込めない』ことを条件とした
「……神になったつもりか」
「なに、気取ってるだけさ。まあ気にせず攻撃してきてもいいぞ」
烈火は顔を顰めていた。
止めようにも攻撃しようものなら自分攻撃によって相手の火力が上がってしまい相手に塩を送ってしまうことになってしまうからだ。
周りの熱を利用しているとヘイルムは言っていた。
そんな話は嘘だと決めつけたかったが、改めて周りをよく見てみると熱気が全くないのことに気づいたのだ。
炎の
なのに感じる温度はいたって平温、むしろ少し肌寒いくらいなのだ。
そのことがヘイルムが周りの熱を利用していることの証明になっていた。
(どうすればいい)
自分が炎の
それに、ヘイルムは自分が何もしなくても周りから熱を集めることができる。
八方塞がり
烈火がそう思っていた時
「あら、なら遠慮なく」
ヘイルムに向かって水の
ヘイルムにとって痛くもない攻撃であったが、体にかかった水が溜めている熱を冷やしていき、放出されていく。
いくら
「誰だ」
僅かながらも溜めていた熱を霧散させられたため怒りの表情を浮かべながらヘイルムは声のした方向へと意識を向ける。
烈火とヘイルムのある道と繋がっている横の路地、そこに一人の女性がいた。
西園寺瑠璃である。
「……君は」
「お久しぶりです。烈火さん」
烈火は瑠璃の登場に目を見開く。
瑠璃は第一異能学園でも優秀な生徒であり、
彼の今の思考はなぜ彼女がここにいる、であろう。
彼女は〈ハイドロキネシス〉の超能力者だと聞いており、炎の自分よりもヘイルムに対しては有効であるはずである。
だが、どれだけ相性が良かったとしても文字通り焼け石に水。
超能力者が
「瑠璃さん。君じゃ相手にならない!早く逃げなさい!」
だから烈火は瑠璃に向かって逃げるように声を上げた。
しかし、瑠璃は逃げることなく烈火の方に近づいてきた。
「いいえ、私も戦います。それに、……
「っ!!」
瑠璃の存在力が上昇する。
それはハッタリではなく、正真正銘瑠璃が
「私は
瑠璃は烈火に微笑みかけた。
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