フタシカなまま、ぼくたちは

ばやし せいず

第1章 佐藤蒼紀

1-1 頭がよくなる水

第1章 「佐藤蒼紀そうき




 「頭がよくなる水なんて無い」。




 彼女は言った。


 はっきりと。






「それでは佐藤蒼紀そうきさん。本校への志望理由をお答えください」


 面接官たちを前にして、「実家を離れたいからです!」と正直に言えるはずがない。

 だから俺は「昇山しょうざん高校は全寮制で、思う存分に勉学に打ち込めるから」「自習室が完備されているから」などと、善良な受験生ぶってそう答えておいた。

 「登校していない間、ご自宅ではどのように過ごしていましたか?」という質問にはつかえてしまったけれど、結果は見事合格。

 学科試験は合計430点で、寮の入所費が免除となった。


 一位にこそなれなかったけれど、バカではないということが証明された。

 少なくとも俺は、そう捉えている。

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