パンツの行方
森 三治郎
第1話 田中 吉乃
「タロ、散歩だよ」
柴犬のタロは、私が声を掛ける前から盛んに尻尾を振っている。家から那珂川河畔公園まで、10分とかからない。急げば5分ぐらいだ。時おり、河原のヘリで
朝、5時前後、女子高生にしては異常に早い時間とよく言われる。タロはオジさんを見つけると、直ぐあいさつに行く。
「お~タロ、散歩か~、よしよし。おはよ~
「おはよ~」
オジさんは、よく「『
そんなこと、一女子高生の私に言われてもしょうがないじゃないか。
元々は、オジさんが田中家を継ぐ筈だった。それがいつまでたっても嫁が見つからず、祖父母は諦めて吉郎の姉、私の母
私にも、歳の離れた
正太郎が家に居ない時、正太郎の宝箱を覗いた事があった。そろっと開けると、ヘビが居た。「きゃっ!」と箱を放り投げると中身が散乱し、石がコロコロ転がった。散らばったのはおもちゃのヘビ、ビニールの刀、ピストル、キャラクターのカード、恐竜、丸い石などガラクタばかりだ。くだらない物ばかり集めている。
うららかな4月の午後、帰り道の前方で女子学生が「キャア、キャア」騒いでいた。
「パンツーマンだぞ~」という声も聞こえる。イヤな予感がした。果たして、正太郎がビニールの刀を手に女学生を追い回している。頭に赤いヒラヒラが乗っていた。良く見ると、赤いスケスケのフチにヒラヒラしたフリルの付いたパンティだ。
「正太郎おおおぉぉー!」
私は正太郎を引きずるように家に帰り、“ガラガラピッシャン!”と引き戸を開けた。
「また~正太郎を
「まっ、何それ・・・・・・どこで拾ったの・・・・・まっ、イヤらしい。正太郎おおぉぉー!」
「まさか、母さんのじゃないでしょうね」
「まっ、何言うのこの子は・・・・・。私がこんなハレンチな物
「バカ言ってんじゃねえよ。純真な女子高生がこんなイヤらしい物穿くかよ」
「あっ、ひょっとしてミオちゃんのママのかもぉ~」
「あっ、それあり得る。正太郎はミオちゃんの言いなりだから、ミオちゃんが頭に乗せたのかも。しょうがないな~まったく、田中家の弟はどれも乗せられやすいんだから~」
母は困ったような、申し訳なさそうな悩ましい顔をしていた。
「あっ、正太郎が居ない」
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