第41話 ロウ視点
閉店後、魔道具屋のテーブルでコーヒータイムをしていたら、耳元から「ギュイーン!」とけたたましい音が鳴った。
ピアスから発されている音だ。パッと椅子の背もたれから身を起こす。
ロザリーの危険を知らせるサイレンだ。悠長にはしていられない。
この時、ロザリーにお守りを持たせて良かったと強く思った。
サイレンが鳴る条件は二つ。一つは魔物に襲われそうになった時。もう一つは人と強い接触があった時。ちなみに握手くらいでは反応しない。
この二つの条件の共通点は「ロザリーに身の危険が迫っているかどうか」だ。
条件のどちらか一つでも引っかかったら、耳のピアスが反応するように細工した。
水晶を出し、それに向けて無詠唱の魔術を発動する。
すると、ロザリーの困った様子が映し出された。
「何だ、コイツらは! ロザリーを引っ張りやがって!」
怒りで頭に血が上りそうだ。
さらに怒りを注いだのは、ロザリーに付きまとったのはどこの賊かと思えば、王国騎士団の制服がチラリと見えたことだ。
なぜ国民の安全を守るはずの騎士団に、このピアスが反応した? 誤作動か? いや、俺の作ったものだから、誤作動はありえない。
違和感を覚えながら成り行きを見守る。
どうも様子がおかしい。
こんな時間にロザリーが数名の騎士団に連れられてどこへ。まるで、捕らえた罪人の扱いだ。
「ロザリーは国を救った英雄だ! そんなことも騎士団は忘れたのか!」
そうこうしている間に、騎士団が転移の魔道具を発動し、王城地下の拘置場へ。ロザリーは鉄格子の中に入れられた。
拘置場だと!? 罪人が裁きを待つ場所じゃないか!
……ってか、俺が王国に納品した魔道具が、ロザリーの拘束に使われるとは腹立たしい!
ロザリーは物怖じせずぶっ飛んだ性格だが、人格者で、罪を犯すような人物ではない。むしろ、困っている人を救いたいという英雄にふさわしい女性だ。
と、そこまで怒りに任せていたが、ふと頭が冷える。
騎士団も何か理由がないと動くはずがない。その理由だ。
ロザリーのことだから、何かトラブルに巻き込まれたのか、やっかむ人物によって嵌められたのか。どちらにせよ彼女を苦しませるのは許せない。
この時ほど大魔法使いの称号に感謝することはなかった。大魔法使いの権限を使い、王城へ乗り込んで自ら仲裁に入ろう。ロザリーの危機を救わなくては。
行き先は司法を管轄している第一王子の執務室にしよう。ちなみに大魔法使いだけが、王城内を転移先にすることが許されている。
俺は最低限の荷物を掴み取ると、転移の魔道具を発動させた。
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