第25話 招待状が届く
ある朝。郵便受けに新聞を取りに行くと、国王主催のパーティの招待状が届いていた。それには王女陛下を救ったことの感謝と表彰したい旨がしたためられていた。
招待状の締めくくりに、気になる一文があった。
――なお、エスコートは大魔法使いに頼んでおいたので、安心して来ると良い。
「エスコートが大魔法使いさま!? 安心なんて、できないわ! ずっと大魔法使いさまと一緒だと考えただけで、変な汗が出ちゃう! ……でも、嬉しい」
「ご主人さま! よかったですね!」
リアが拍手して喜んでくれた。
「これは、ロウに力説したかいがあったかしら」
「どんな風に力説されたんですか?」
「剣術が素晴らしいとか、男気があるとか、褒めまくったのよ! 全部嘘じゃないけどね!」
いいですね! と手放しに同意してくれると思ったのに、遠い目をしたリアから「そうだったんですね……」と少し小さな声で言われた。
「何か問題でもあった?」
「いいえ。褒められて嬉しくない人はいないと思いますから、問題などありません!」
無理やり言わせてしまった感じはあったが、リアの返事を聞いて安心した。
「そうよね。ロウから私が大魔法使いさまを好きだと伝わって、エスコート役に抜擢されたのかもしれないわ。ダメ元で言ってみるものね」
「楽しみですね」
「大魔法使いさまのお側にいられると思うだけで、嬉しくなっちゃう。楽しみだわ」
想像しただけでワクワクしてきた。
国王主催のパーティには、クローゼットの奥にしまい込んでいた黒いドレスを着て行こう。聖女のときはアーサーから似合わないと却下された色。今考えれば、なんであんな奴の言うことを聞いてたんだ私。
もし大魔法使いさまが黒い衣装を着て来られたら、お揃いの色でいいわよね。
国王主催のパーティに招待されたことを自慢しようと、意気揚々とロウの店に行ったのに、珍しく閉店の看板がかかっていた。
あれほど、店を空けるわけにはいかないと力説されたというのに……。
急用でもあったのだろうか。
その後日も店が閉まっていたり、私に用事があって行けなかったりでロウと顔を合わせない日が続いた。
そして、国王陛下主催のパーティ当日。
リアにドレスの着用を手伝ってもらい、背中のリボンをギュッと引き締めてもらった。
「苦しくないですか?」
「大丈夫よ」
リアは私の前まで飛んできて、出来栄えを見てくれた。
「黒いドレス、よくお似合いです」
「色やデザインは気に入っていたのに、聖女っぽくないと言われてずっと着れなかったドレスなの。やっと着ることができたわ」
「それはよかったです!」
姿鏡を見ればおめかしした自分が映る。リアのおかげで、大魔法使いさまと並んでも恥ずかしくないくらいに仕上がった。これもリアの手を貸してくれた化粧のおかげで、少し大人っぽく見える。よし完成。
家でお留守番をするリアに声をかける。
「お手伝いありがとう。リア、行って来るわね!」
「ご主人さま、行ってらっしゃい! 楽しんできてくださいね!」
手を振ってきたリアに、私も振り返す。
転移魔法を発動させると、王城の入り口に着いた。
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