異世界の屋台のおっさん~肉串が店に並ぶまで~

アルミ

売り切れ

「最後か」



屋台で提供するための肉が売り切れた。


次の仕込みのため、肉を仕入れに行くことにする。






俺は、A級ランクの冒険者だ。

利き手ではないが左うでの負傷によりパーティーを脱退。今はソロだ。

パーティーのメンバーには、無口で無愛想だとよくからかわれた。別に話すのが嫌いなわけではない。何を話せばいいのかわからないだけだ。メンバーは理解してくれていたようだが。

だから、ソロがちょっと身に沁みる。



屋台を始めたのは、駆け出しの頃に食べた肉串の美味うまさが忘れられず、また食べたいからだ。

まだ、味の再現は叶っていない。





さっき売り切ったのは、オークの肉だ。


肉串は安価で安定して仕入が可能なウルフ、ボア、ラビット系が多い。


俺も一通り試してみたのだが、あの美味うまい肉串の味ではなかった。

それ以来自分で狩って肉を調達している。

これから肉の情報を得るためギルドに向かい、依頼を受けようと思う。





冒険者ギルドは、街の中央よりやや正門よりにある2階建ての大きな建物だ。その扉をくぐる。


なんだか妙に視線を感じる。

若者の多い時間、おっさんがギルドに入るのはおかしいと思われているのか?

居心地が悪い。

さっさと掲示板の方へ移動する。


こんな調子だから誰も俺と臨時パーティーを組んでくれない。仕方なくソロで狩れそうな依頼を探す。


既に昼を過ぎたこの時間、割りのいい依頼は残っていない。しかし、俺はソロで肉の調達が目的のためあまり気にならない。これにするか。




受け付けに依頼書を渡す。


「こちらの依頼ですね」

「あぁ」

「Bランクパーティー推奨の案件ですが、ソロで受けられますか?」


何故か挙動不審にキョロキョロしている。

特に問題ないので肯定の返事をする。


「で、では、ご説明しますね。ーーー


以上になります。ご質問はありますか?」

「ない」

「冒険者証をお願いします」

「あぁ」

「お気をつけていってらっしゃいませ。」


何故あの受付譲はソロを強調するんだ?

虚しくなるから止めてほしい。



今回受けたのは、少し遠い村の近くにミノタウロスが出たというものだ。

移動に時間がかかり、単体での出現のためパーティーでは利益が出にくい。その上村が依頼主のため依頼料も安いというものだった。





まずは、市場で食糧や消耗品を補充する。

一旦帰宅し、冒険者用の装備に着替える。

朝まで待ってもいいが、屋台を長く閉めるのは気が進まない。すぐに出発することにした。




もうすぐ夕方。

この時間に外に出るものは少なく門番に止められたが、問題ないので通してもらう。


そのまま走れるところまで走るつもりだ。






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