第2話

「・・・」


「とりあえず、ご飯食べようか。それから色々なことを決めよう」


ーーー


「・・・」


「おー、やっぱりこの服似合うじゃん!!すげぇ可愛いよ」


ーーーー


「・・・」


「今日この映画見ようか、趣味は何から好きになるか分かんないしな」


ーーー


「・・・」


「今日の運動会凄かったな!!リレーで3位!!よく頑張ったよ。えらい、えらい!!二人も抜いてすごいじゃん!!」


ーーー


「・・・」


「コーヒー、飲んでみるか?」


ーーーー

最初の一年はとりあえず、春が笑顔になるように様々なアプローチをした。


ずっと静かで何も話さない、そして笑顔もない春に笑って欲しかった。お兄さんかお父さんと呼んでほしかった。


今でも覚えている。


ーーーー


「春はそんなことはしない!!」


「なんで、あなたは義理でしょ。春さんの何が分かるんですか」


学校に呼ばれた時だった。春がクラスメイトに殴ったと言う話があった。


当然、春はそんなことはしないと分かっている。


俺は凄くムカついた。学校側も春はしてないことは分かっているだろう。だけど、そう言うことにした方が楽だから。


俺は当然認めず、春に謝罪もさせなかった。そして転校することにした。


春は一言言った。


「迷惑かけてごめんなさい。」

春が初めて俺に言った一言だった。


そんなことない、大丈夫だ!と言いたかった。だが、春の震える姿を見て俺は言えなくなってしまった。


何も言えなかった。言えなかった。

大丈夫って、


今までの春の苦労と、周りの環境、そしてこの震える姿を見て、大丈夫だと、安心させてあげる一言が言えなかった。


「俺は、俺はなぁ」


「・・・」


「もっと、もっと、」

また言葉を失ってしまう。

謝らせてしまった。何も悪くない春に謝らせてしまった。


俺はただ何も出来なかった、あの時軽い気持ちで春を引き取ったことを自分を悔やんだ。

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