第123話 ゴブリン!?
どうやら俺とカブの予想は当たったようだ。
「あーそんな頭下げられんの苦手なんだ。普通に話してくれ」
俺は今にも土下座しそうなユルゲンにそう頼み、ユルゲンは立ち上がった。
「実は、町の近くの
え……。
なんか、拍子抜けした。
「んー、なんかそれ……例の王様の命令と一緒じゃね?」
ユルゲンは眉をハの字にして苦笑しながら答える。
「……実は私は王から直に、カイトさんを説得するよう命じられたのです」
「魔物と戦うように?」
「はい……」
ここで俺はちょっと身構えた。
俺は以前このドゥカテーでケイの上級土魔法を見ているが、ありゃあ相当な威力だ!
その師匠であるユルゲンは、普通に考えてそれ以上の魔法を使えるだろう……そんな奴らがいるのにわざわざ俺に助けを乞う程、魔物が強いってことか……?
そんな俺の内心を見透かすかのようにユルゲンは説明した。
「実はその魔物自体はそこまで強くないのですが、厄介な事に我々の魔法術を弱体化させる魔法を使ってくるのです」
「あー、そういう事か……」
俺は納得すると同時にゲームとかでありそうだなと思った。
そしてユルゲンに確認をしておく。
「俺達、夜までに帰らなきゃなんねーから、ちゃっちゃと倒すぞ!」
「え!?……」
ユルゲンは驚きと同時に、俺達に対する頼もしさからか頬が緩んでいた。
「おじ、強い!カブも強い!」
ターニャがバンザイしながら俺とカブを喧伝している。
ユルゲンがカブについて聞いてきた。
「カブ……確かカイトさんの馬だと聞いてます」
「馬じゃないですーー!!」
カブが大声で突っ込んだ。鼻息を荒くするイラストがタブレットに張り付いている。
嫌なのか?馬カッコいいと思うんだがな……。
「僕はHONDAが産んだロングセラービジネスバイク。その名も『スーパーカブ』です!そこんとこ夜露四苦ゥゥお願いしますゥゥ!!」
カブはウインカーやらヘッドライトやらを点滅させて自身をアピールしている……。
「ま、まあちょっと落ち着け、カブよ。ユルゲン、その場所に案内してくれ」
「え、その……装備とかは……?」
「いや、特に必要ない――あっ!アレは欲しい」
その場の皆が俺に注目した。
そう、アレとは――『石』だ!(とある球団のリーグ優勝ではない)
――それから皆に協力してもらい、投石しやすい石ころが3〜40個ほど用意できた。
「うっし、サンキュー。ちょっと肩慣らししてみるわ」
俺は適当な石を掴み2〜30メートル離れた岩に向かって投げつけた!
「はぁっ!!!!」
――バチィッッッ!!パラパラ……。
投げた石は砂煙を出しながら木っ端微塵に
砕け散った!
「おおーーーーっ!」
皆が一斉に歓声をあげる。俺もビックリだ。
こっちの世界に来てパワーはもちろん運動神経まで格段に上がっているようだ、思った通りの所に投げられたぜ!ふっふっふ。
――ガギャギャギャゴルォウウオオオッッ!!!!
隣のカブがエンジンを掛けたようだ。相変わらずとんでもない音だ。
「カイトさん、見て下さい!」
ドルァアッ。バッ!!
カブはなんとウイリーしてから真上に3メートル程飛び上がった!!ええーー!?
ザンッ!!
カブは再び地面に着地し、誇らしげな顔を見せる。
「どうですか!?このアクロバティックな動き!!」
「おおーっ!カブすごーい!!」
ターニャがものすごい勢いで拍手している。
俺も思わず苦笑いした。
「す、素晴らしい……あなた方なら必ず奴ら……『ゴブリンズ』を打ち倒せますよ!」
ゴブリン……あー、ゴブリンか。
俺はちょっと敵の名前が弱そうで拍子抜けしたがまあいい。
「とりあえずゴブリン達に恐怖を植え付けて町に近寄らせないようにしてやる!それでいいんだよな?」
「は、はい。ご協力ありがとうございます!!」
――という訳で、俺達4人+1台はその城跡の近くの森へやってきた。茂みの奥から奴らの陣営を覗いてみる。
城には見張り役と思しきゴブリンが5~6体。そして奥にはゴブリンにしては魔術師っぽい格好の奴が1体!あいつか……。盾を持ったゴブリン達に厳重に守られてて姿も見えづらいな。
「なあ、今この位置からあの魔術師みたいたゴブリンに魔法打ってもダメなのか?」
ユルゲンは真剣な顔でちょっと考えた末、こう答えた。
「やってもいいですがそれが開戦の合図になります。おそらくあのゴブリンマジシャンの魔法デバフにより、私達の魔法は大幅に弱体化されてしまうでしょう。そしてすぐに城内のゴブリン達がこちらに攻めてきます」
「なるほどな。……おいターニャ?お前は絶対出てくんなよ」
俺は真剣な顔でターニャに命じる。
するとターニャは不満そうにつぶやいた。
「えー、ターニャもたたかう……」
俺はターニャの顔に自分の顔を近づけしっかり目を見て話した。
「ダメだ!こればっかりは言う事聞け。お前になんかあったりしたら俺も……セシルも立ち直れんぞ」
「……うー、う、うん。分かったー!ここでまっとく。おじ、がんばって!」
俺はニッコリ笑い、ターニャの頭をワシャワシャして「よっしゃ」と返した。
――しばらく作戦を練った後、最後にユルゲンが忠告してきた。
「カイトさん。僕ら魔術師は肉弾戦では戦いに慣れたゴブリン1匹にすら勝てません。カイトさんとカブがもし失敗すれば……私達は捕まってしまう……」
「任せろ。……ってか、ユルゲンとケイに言っとくが――」
俺は二人を見た。
「は、はい?」
「何?おじさん……」
「最初に魔法打った後はもうターニャと一緒に後ろに逃げとけ。正直邪魔になる」
ユルゲンとケイはお互い顔を見合わせ、そして言った。
「分かりました。カイトさんを信じます」
「がんばってね、カイトおじさん。カブもね!」
「お任せ下さい!負ける気しません!」
――作戦開始!!――
ケイとユルゲンは見張り役に気付かれる寸前まで城に近寄った。
そしてその体からオーラのような光を放ち、標的のゴブリンマジシャンめがけて最大火力の攻撃魔法を打った!
――ゴゴゴゴゴゴ……。
こ、この揺れは!!
……そう、以前見たケイの上級土魔法だ。
岩の槍が地面から標的を串刺しにする恐っそろしい魔法!
そしてちょっと上を見上げるとなんと、……城の上空には城内を全て洗い流せるほどの巨大な水球が出来ていた!!
おおっ!なるほど。確かにこの地形だと水攻めは雑魚ゴブリンを一気に攻撃できるし城も壊せる……超効果的だ!!
しかし――。
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