第2話 煙草とコーヒー、よりも乳酸菌飲料
「田辺さん田辺さん」
「朝からテンション高いですね三國さん」
「えへへ」
「褒めてないけど」
「そんなことより、コーヒーと煙草って口が臭くなるの知ってますか?」
「それはコーヒー片手に朝の一服をしている俺への嫌味かな?」
「えへへ」
なんとなくやる気のでないときがある。
俺はそれが朝であることが多い。
それは自分が低血圧であったり、昨夜夜更かしをして睡眠が足りていなかったり。
理由を挙げればそれらしい理由が浮かんでくるが、結局のところ今日一日楽しいことがないというのが一番大きいのではと思う。
「それで、コーヒーと煙草が合うのはわかるんですけど、口が臭くなるじゃないですか」
「それ以上の楽しみがあるからこのセットはやめられないと俺は思う」
「やー、でも女の子としてはですよ。口が臭いなんて周りに思われてしまったらお嫁にいけないのでそのセットを嗜めないわけですよ」
「俺が男を捨てて口臭を受け入れた一生独身男だと言いたいのかな」
「いや、何事も精一杯楽しむ素敵な方だなーと」
「えへへ」
「あ、褒めてないです。あと男のえへへはなんか怖いです」
すみません。
「それでー、なんでコーヒーと煙草、セットにすると口が臭くなるか知ってます?」
「いや、それは知らない」
なんか急に眼鏡をかけだした。
「煙草とコーヒー、それぞれ単体でも口が臭くなる原因があります」
はい。
「でもその二つを同時に嗜むことでより口がくさーいってなる原因はニコチンとコーヒーの性質に原因があるんです」
口がくさーいのところでこれみよがしに俺のほう見るのやめてもらえませんか泣きそう。
「皆さんがご存知ニコチンですが、ニコチンを摂取すると血流が悪くなって歯茎の血管も収縮して唾液が少なくなると同時に、歯周病菌に対する抵抗力も低下します」
お、賢い感。
「それによって口臭の原因になる細菌が増えて口が臭くなるわけですが、ここにコーヒーさんが登場すると、口の中が酸性になってより細菌を増殖させてしまうのです」
なるほど、と。
「だから私は煙草の際はコーヒーではなくこれを飲みます」
ででん、とポケットから取り出す。
「乳酸菌飲料ですね」
「そーなんです。健康にもいい、おいしい、口が臭くならない。これ最高じゃないですか」
「煙草吸ってる時点で健康とか言われてもな」
「この美貌の保つには健康にも気を使わなきゃなんですよ」
「煙草を吸ってる時点で「それはそれです」
はい。
「それに乳酸菌飲料っておいしいですよね」
「まあ甘くておいしいね、砂糖が入ってるし」
「......腸内環境とかよくなりますし」
「砂糖がたくさんはいってるけどね」
「それにそれに......田辺さんもしかしてドが付くSですか」
「ドが付く変態です」
「もしもしセクハラ相談所の方ですか」
「ごめんなさい乳酸菌飲料は最強です」
「わかればよろしい」
危うく道を外しこれから先セクハラという業を背負い世間に蔑まされて生きていくところだった。
「でも田辺さん口臭気になったことないですね」
「そりゃどーも」
「何か対策でも?」
口臭ケアのガムを噛んでるだけよと。
「その手があったか」
「真っ先に思いつかない?」
「思いつきませんでした......」
コーヒーと煙草の因果関係は調べても対策は調べなかったのですね。
「じゃあ、これはいらないのであげます」
乳酸菌飲料を渡された。
「別にいらないんだけど」
「太るので私もコーヒーにします」
「俺が太るでしょ」
「だいじょーぶですよ」
仕方ない、彼女のダイエットのためにも受け取っておくか。
「あ、煙草終わりですね、もう一本吸いますか?」
「一刻も早くガム噛みたいので戻ります」
「それは一大事ですね。それではまた」
「ああ、一応ありがとう。じゃ、また」
「えへへ」
喫煙所を出る。ちょうどいい息抜きになった気がする。
先ほど受け取った乳酸菌飲料でも飲もうかとふたを開けると側面に文字が見えた。
ーやる気、出ましたか?笑
単純だけど、いつもより少し早くやる気が出た朝だった。
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