【11万PV,1240F,★170,♡2450】勇者にフラれた最強美少女の『ざまあ』を手伝ったら、急にスローライフが始まりました~俺でいいならお好きなだけ隣にどうぞ~
Episode057 公演1日前、ちょっとマズいです。(いい意味で)
Episode057 公演1日前、ちょっとマズいです。(いい意味で)
俺たちのアイドル計画が始まってから、もう一週間が経過した。
皆は庭先で歌やダンスの練習を頑張っているが、俺はその間に冒険者ギルドにある舞台の予約やステージ演出に使えそうな魔法を持っている人を探す等、意外と忙しい。
なんだか前世に体験した――一度だけになってしまったが――文化祭の用意に似ていて、俺は普段と違うが充実していると感じる。
現段階で、『花吹雪』や『閃光』、『火花』といった多種多様な魔法を使えるようになり、今日も皆の練習を見ながら、どのタイミングでどれを使うべきか考えている。
俺が本番で気まぐれに「ココだ」と思ったタイミングで使ったらいいんじゃないかとは思っていたのだが、一度も考えないで本番を迎えるのは危険だからな。
一通り練習が終わって座り込んだ皆に『飲料水生成』という魔法―――なんかボーナスとか言って『花吹雪』を教えてくれたおじさんが教えてもらえた――で創り出した水を、コップに入れて持って行く。
「ありがとうございます。やっぱり、アヅマくんに見てもらいながらやると、皆さんもやる気が出るみたいですね」
「それなら何よりだ。それと、その水の中には『治癒』を溶かして混ぜておいたから、疲労回復になるはずだぞ」
俺はユイナと話しながら、全員にコップを次々に手渡す。
俺が『治癒』を水に混ぜて飲ませようとした経緯は、肉体に直接魔法を使うより、体内から浸透させた方が効果が出ると思ったからである。
その水を飲み干した皆が少しだけ元気になったように見えたし、本当に効果があったみたいだ。
とりあえず、今日はそろそろ例のブツを作っておかねばならない。
もしかしなくても、そうしておけば俺たちが儲かるからな。
まあ、今回の儲けは――現世住まいの――皆の親に手紙と一緒に送るつもりだが。
*
一時間以上も先に家もとい屋敷に戻っていた俺は、ソレを黙々と作っていた。
コレは、地球だとライブという概念には必要不可欠な存在だったとすら思える、あのピカピカ光るアレだ。
そう……ペンライトである。
使い捨てになってしまうが、俺の『閃光』を30分は保てるようにぶち込んだ一品であり、かなり俺の魔力を使うのだ。
『物質創造(中)』でも作れなくはなかったのだが、そうすると3分で光がなくなってしまったことが問題になり、『閃光』を込めることになったのである。
どうしてたった一曲だけなのに30分もどうにかなるようにしたのかというと、どうせライブ前後でユイナたちと話したい輩によるトークショーみたいなのが必要だと感じただけ……というか、俺ならそういうのは欲しいと思ったからだ。
練習を終えて入ってきたユイナたちも、俺の意見には苦笑しながら頷いてくれた。
「もしかすると、ステージの上に這い上がってこようとするヤツがいるかもしれないけど、その時は思い切り蹴ってやっていいからな?」
「ええ……。コトネちゃんは必至じゃないと、そんなに脚力ないよ~」
普段は眠そうなのにダンスの練習は誰よりも頑張っているコトネはそう零すが、俺としてはそうでもいい。逆にそうであれ。
わざわざ這い上がってくるヤツは、蹴られたのなら、「ありがとうございます! もっと蹴ってください!」とか言ってくる狂ったのが出てくるのはおかしくない。
王都の冒険者は意外と想定のつかない連中が多いからな……。
それと今更なのだが、俺はどうして王都で名前が通ってしまっているのかが最近のちょっとした疑問になっている。
アソコには50000人以上が住んでいるらしいのだが、昨日なんて子供たちに「出たな女誑しのクヅマ!」とか言われて追い回されたし、帰りにいつものところと違う八百屋に寄ったら、「全員幸せにできるって言うなら、サービスしてあげるよ」とか言ってかなりの量の野菜を貰っちゃったし。
そういうワケで、まだ宣伝はしていないのだが、無理矢理に魔法を発動させてペンライトは10000個創っておいた。
もしかすると、王都に住まう皆が来るのかもしれないからな。
さて、もうあと5日後に公演だし、午後からは宣伝に行ってくるとするか。
――って感じで油断し過ぎていたのが、つい4日前の自分である。
そして、今から18時間後の今頃には、センターがナノックのライブが始まっている。
ついさっきギルドに行ったら、受付嬢の1人が「明日に控えている公演ですが、王女様から『アン公の像のある広場に特設ステージを設置しますので、そこで公演してください。ダーリンが皆さんと作り上げたステージ、ワタクシも見届けさせていただきますわ』と書かれた紙を、執事の方が届けてくれましたよ」と言ってきた。
まさかもうディアーにまでその情報が入っているとは思ってなかったが、普段から混み合っているあの広場にステージを作ろうとは、流石王族である。
俺の貴族とかに対する傍若無人というイメージは、この世界にも適応したってことになるのがちょっとイヤだが。
それと……。
「アヅマくん! もう皆さんが場所取りを始めてますよ!? 明日の10時に公演としていたはずなのに、あの人たちは12時間以上待つつもりなんですか!?」
逃げ帰ってきたと見ていいらしい12人が家に入ってくると、ユイナが叫ぶように言うが、俺からしたら想定外のことではない。
場所取り禁止とは誰も言ってないんだし、そうなるのはむしろ当然の流れである。
うん、当然……。
いやいやいやいや! どうしてそんなことが起こってるんだよ!
いくら最近俺の名前がやけに王都の中で広まってるって言っても、どうして犯罪マガイな事態になってるんだよ!
誰も彼もがユイナたちの可愛さを一目拝みたいって思ってるんだったら、俺としても自分のことのように嬉しいんだが……。
まあ、センターが3000年を生きる大魔導士であるナノックだってのも影響してるんだとは思うんだけどさ?
3日前から始めていたアクリルスタンドやらキーホルダーやらも、100個程度なんてすぐになくなるのは不可避ってことになるのが辛い。
しょうがないし、今夜は夜なべして少なくとも10倍に増やすか……。
俺は自分用に1Lの『治癒』を混ぜた水を用意すると、『物質創造(中)』を発動させるべく、手に魔力を込めるのだった。
次回 Episode058 12人は完璧で究極のアイドル
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます