【11万PV,1240F,★170,♡2450】勇者にフラれた最強美少女の『ざまあ』を手伝ったら、急にスローライフが始まりました~俺でいいならお好きなだけ隣にどうぞ~
Episode007 スローライフ、開始。そして、来訪者。
Episode007 スローライフ、開始。そして、来訪者。
俺たちはギルドにて、溜まっていた総勢50人もの冒険者たちにあの一件を話した。
多くの冒険者たちは、王都に勇者の右腕であるはずのユイナが帰ってきたことに信じられない様子でいたが、俺と会ってからの話を2人でしたら場は大盛り上がり。
羨ましがる声や祝いの声と、数十通りの言葉が俺たちに浴びせかけられた後でユイナが恥ずかしそうに俯いたのはベストショットであった。
グリフォン討伐やそれ以外のクエストでも協力してくれたケントたちも、お前はやっぱりチートだからハーレムの素質があるんじゃないかとからかいながら祝ってくれたが、できればハーレム展開だけは避けたい限りだ。
それで、そのまま夜遅くまでどんちゃん騒ぎは続いたのだが……。
「……うう……。頭が痛いです……」
……どうやらウエイトレスさんが間違えて持ってきたお酒を気付かずに飲んでしまったらしいユイナが、二日酔いみたいなのを起こしている。
この世界だと飲酒は自己責任ってことで何歳からでも許されているらしいが、ユイナだってまだ俺と同じく17歳……だよな?
女性に年齢は訊くもんじゃないから、まだ訊いていなかった。
外見だけで考えると、普通に日本で言う未成年くらいの年頃だとは思うが。
「なあ、二日酔い状態になってるから一応訊くんだけどさ。……ユイナって何歳?」
「私ですか……? 今年の8月で16歳です……」
……あっ、まさかの俺より年下だったのか。
というか、今がだいたい5月末だから、あと二月もしたら8月なんて目の前だ。
まだ少し先だけど、ユイナの誕生日について考えておいた方がいいな。
今更だが、俺の今の肉体の年齢とか知らんから17歳としてるけど、実際は俺も16くらいなのかもしれない。
あ、試してなかったからまだ分からんけど、『治癒』で頭痛とか治せるんだろうか。
そう思い、俺は何気なく『治癒』を発動する。
「……あれ、なんだか頭痛が急に治まりました……」
「よかったよかった。まさか『治癒』が二日酔いにも効くと……」
「ちょっと待ってください! 『治癒』で私の頭痛を治したって言いましたか!?」
え、もしかして、『治癒』じゃ頭痛は治らないって話なのか?
俺がコピーするときに見た『治癒』って普通じゃなかったってこと?
それとも、ケントが言ってたみたいに、俺ってチーターだったのか。
いや、『魔法再現』だけでもチートなのに、そんなことになっていたとは……。
「個人差はありますが、魔力量が多ければ多いほどに、魔法の効果が強くなるというのは昔から言われています。あなたは魔力量が多いのかもしれません」
……俺ってチーターじゃなかったってことか。
魔力量が多いのはいいことなんだが、チートな体質だからとかの方がよかった。
俺だってそんなことで文句を言ったってどうしようもないのは分かってるが。
「とりあえず、畑の手入れをしませんか?」
俺の魔法ですっかり元気になったユイナが、笑顔でそう言ってくる。
まあ、ユイナが元気になったんだし、それだけでいいとするか。
促されるままに外に出た俺は、家の横にあるそれなりの広さの畑を見る。
だいたい学校のプールくらいの広さもあるその畑は、良質な野菜が量産できればちょっとした農家くらいはできるんじゃないのかと思えてしまう。
「昔は皆さんが『面倒だ』と言って何もしなかったんですが……。思ってみれば、あなたと出会ってから初めてのことばかりで毎日楽しいです」
……こうやって俺を照れさせてくるユイナの言葉は、素なのか素じゃないのか。
どうであれ、嬉しいからその辺には触れないでおく。
「あ! まだ
お、遂に俺の一番使いどころがない魔法の出番か。
本当に、この魔法だけは何があって生まれたのか不思議なんだが。
そう思いながら、俺は手の中に鍬を出現させた。
「……どうして鍬がそこにあるんですか?」
「え? ああ、俺の持ってる魔法の1つである『農耕作業』って魔法だ」
そう、本当に『農耕作業』だけは生まれた意味が分からん。
農家が魔物に出くわしても戦えるようにするべく生まれたとしか考えようのない魔法なんだが、まさか俺みたいなのが普通に耕作で使うことになるとは。
そのうち戦闘で使うだろうくらいに思っていただけだったんだが。
ちなみに、この魔法は集団で暮らしていたゴブリンの集落を襲ったときに発見した魔法だから、普通に人間が取得しているタイプの魔法かどうか怪しい。
「ほら、これですぐに耕せるだろ? 魔力で作られてるから使用回数には制限があるけど、その分だけ土地が魔力を含んで、いい作物が作れるっぽいぞ」
『解析』はそういうことも分かるから便利である。
俺は鍬をユイナに渡すと、畑に一歩踏み入れた。
意外と草が生えているこの畑をどうしてくれようかと考えていると。
「……やっぱり、あなたは何でもありな人ですね……。そんなあなたを手放すワケにはいきませんね」
そう言って微笑み、ユイナも畑に踏み入れた。
……俺、この作業中に鍬を振り下ろすのに失敗して、腹に鍬が刺さって死ぬのか。
まあ、そのくらいにはこの人生は贅沢すぎるなと、改めて実感した俺なのだった。
……その迫りくる人影に気付かないままに。
次回 Episode008 ドラゴンテイマーの少女の依頼
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