OKAËRIへようこそ
あゆみ
第1話 プロローグ
パリ左岸、カルチェラタンのソルボンヌ大学と本屋さんが立ち並ぶ急な上がって行ったところに小さなサロン、OKAËRI(おかえり)
パリジェンヌに愛され、予約を取るのも難しいここにくる人たちは、みんな何かを抱えて生きている。調子は悪い、でも理由はわからない。医者はとりあえず薬を出したり、キネは運動療法で痛みを改善する為のアドバイスをくれる。オステオは身体の歪みを治してくれる。プシコログは精神カウンセリングをしてくれる。でも、そうじゃなくて、どこが痛いのか、どこが悪いのか、わからないけど、ただ調子が悪い。そういう人たちの駆け込み寺になっているのがここ。
パリと聞けば、愛の都、建造物は美しく、世界屈指の観光都市であり、そこに暮らすパリジャンはいつもスマートで、個人主義で、さらっとセンスの良いものを着こなし、スタスタと街をカッコよく歩き、仕事をバリバリし、週末とバカンスは思い切り楽しみEtc etc …世界に創り上げられた幻想の中で、常に生活とストレスと大気汚染に晒されて、交通渋滞やどこかで怒鳴っているホームレスの声、周りからの評価と言葉に傷つき生きている。
パリジャンの肌はボロボロで、鼓膜は常に疲れ果て、眉間には深いシワが刻み込まれている。
店主は私、岡田絵梨 (おかだえり)
東京出身、28歳。
都内の私立大学を卒業後、就活はせず学生時代からやっていた塾講師の仕事をそのまま続けていた。
実家暮らし、そのままお嫁に行って専業主婦になり夫を支える毎日を過ごす。
結婚したい相手もいなかったから、未来の旦那様はお見合いで見繕ってもらう予定だった。
でも今私はパリにいる。パリで、小さなサロンの社長として、社会の荒波に揉まれながらサバイバルをしている。ここに至った経緯は、また後ほど、機会があれば話すことにする。
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