記憶喪失で目覚めたら、なぜかクラスの美少女二人が彼女になっていた件
蒼アオイ
001 二人の美少女
高い進学率を誇る名門校・桜王学院に通っている高校一年生の俺・
超絶美少女の二人が。
で、一人は―――
「
こう言って絶景を拝むポーズをとる彼は、後ろの席の
要するに陽キャ。異論は認めん。
うらやましいと、全世界の男はそう思うだろう。しかし俺は全くそうは思わないぞっと。
なぜなら俺は、勉強さえできればそれでいいメガネ陰キャだから。
彼女なんて不要。勉強一筋。
もう一度言う。彼女不要! 勉強第一!
「おい、
敬に小声で言われて気付いた、なぜかクラスのマドンナが目の前に居たことに。
白くて綺麗な脚がスカートから覗き、スタイル抜群で胸元まで伸びる長い黒髪、そして何より誰もが飛び跳ねるほどの美少女。切れ長の目に、強烈な猫顔。
「なんでしょう委員長様?」
俺は文武両道、成績優秀と称される一ノ瀬にゴミを見るような目で見られ、新しい性癖に目覚めながらも尋ねたが、
「また勉強? 相変わらずみすぼらしい。あなた、それしかできないの?」
しかし唯一残念なのは性格。論より証拠が、何と目の前に!
この超絶美少女・
そう、アレなのである。
大事なことなのでもう一度。そう、アレなのである。
「一ノ瀬委員長、そんな野暮なことをわざわざ言いに来てくれたんですか? 随分と暇なんですねー」
俺は顔を引きつらせながら言うと、彼女も最大限顔を引きつらせながら、
「あら、
俺の方は別に順位なんて気にしていない。どうせ全部満点なのだ。一位に決まっているのだ。それ以外ありえない。
「それと一応言っとくわ、霧咲凛斗」
「はいなんでしょう?」
「この間の試験日は少し体調が優れなかっただけ。分かる? 次回の定期考査は如何なる理由があろうとも、私が勝つわ」
そう、彼女は何かと理由を付けて毎回、定期考査「学年順位一位」の俺に勝とうとしてくるのだ。
こうやって一位を取り損ねた、具体的には俺に一位を奪われたときは必ずここへ来て、こうやって俺に宣戦布告してくる。
次は絶対に勝つ、と。
「これで何度目だ? あんた何回体調崩すんだよ?」
「ん――そ、それは……違うのよ。って――あなた生意気ね」
今は10月上旬で、この間行われた2学期中間試験は9月下旬だった。要はそれの順位が廊下に張り出されたのだ。
俺はそれらを見る必要はない。確認する必要もない。
なぜなら全教科満点だからだ。一位に決まっているのだ。
「生意気で結構コケコッコー」
ふざけると、睨まれた。
ね、今睨まれたんだが?
「その態度が生意気なのよ」
そう言って去っていった。
「毎回毎回……突っかかってくるの何なんだ? 俺のこと嫌いなら放っといてくれればいいのに」
教室を出ていく一ノ瀬の背中を眺めながら言うと、
「実はお前のこと好きかもよぉ?」
「んなわけないだろ」
◇ ◇ ◇
その日の昼休み。俺はいつも通り着席しつつ、大好物のサンドイッチを片手に数Ⅲの参考書を開いていると、
「きゃははっ! 受けるんだけどー!」
「いや、なにも受けないから!」
そう談笑を繰り広げるのはクラス中央の席のギャルたち。具体的には三人。
実際はギャルではないらしいが俺のフィルターでは皆ギャルに属するのだ。
まあうち一人はクラス内で一ノ瀬と張り合うと言われるポニテの金髪美少女。
顔は少しキュッとしていて、韓国人に似ている。小顔と言えばいいか。
清潔感もあるし、俺的にはクラスで一番可愛い。
名前は……
「
いや、お前らどうせ全部がだるいんだろ? 俺知ってるぞ?
五時限目が古文だろうが現代文だろうがおそらく同じセリフを言っているに違いない。
「ん、あたし宿題忘れた。誰かやってる?」
刹菜が訊くと、
「うちらがやってるわけないじゃーん」
当然のようにトンデモ発言を放ったギャル。
「げー」
言いながら彼女は何故か、俺の方に近づいてくる。
……って! え? なんでこっちくんだよ!
俺は慌てて参考書に目を移した。
成程……ドモアブルの定理。楕円の式。複素平面……と頭の中を数式で埋める。
なぜこんなに動揺してるかって?
だって俺はこの人が大の苦手だ。可愛いと思うのと人間的に馴染めるかは別の問題。
「あのさ陰キャメガネ……五時限目の数学の宿題、やるの忘れたから見してくんない?」
ぶっきらぼうにそう言われる。陰キャメガネとは無論俺である。
なんとも酷い呼び名だが何も間違っていないので否定は不可能という訳だ。
「いや……」
少し口籠ると、
「いやって何? 拒否権とかないから」
すぐさま無愛想に告げられた。
んー、しんらつぅ。陰キャにはきついぃ。
仕方なく、
「宿題、このノートに答えが書いてある……」
俺は彼女の表情も確かめずに、そのノートを手渡す。
「ねぇ、こっち見て喋ってよ。なんか感じ悪いし、顔も見たくないって言われてる気分で腹立つからさ」
「わ……分かった。すまない」
彼女から声を掛けてくるパターンが初めてだったのもあり、少し戸惑っている。
俺は所詮陰キャだ。成績がトップでも馴染んで話せるのは毎回話しかけてくる一ノ瀬と敬だけ。
五十嵐とは真面に話せそうにない。
◇ ◇ ◇
そして――――
俺が次に目覚めた時にはもう、記憶が――無くなっていた。
「リント……忘れたの? あたしがあなたの彼女だったのよ?」
精神科のベッドの上で上半身を起こす俺に、見舞いに来てくれた金髪ポニテの美少女がはにかみながら告げた。
「え、君が? そ、そうなのかなぁ……」
こんな可愛い子が?と疑問に思ったが俺はそれを信じるしかなかった。
のちにこれが嘘だったと発覚するのは一時間後の事である。
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