視点論

坂条 伸

右翼と左翼

 SNSなどで政治について語っていると、対立軸の思想の方と会話が成り立たなかったり、突然身に覚えのない意味の分からない所謂「クソリプ」が来ることがありませんか?


 その原因の一つは、自身の世界の見方と相手(対立軸側の思想の方)の世界の見方の相違のせいかもしれません。


 世界をどのように見ているか、自分自身が右翼であるか左翼であるかをきちんと自覚し、対立軸側の思想がどう世界を見ているかを知ることで、何故「クソリプ」が送られてくるのか、自分が送らないようにするにはどうすれば良いのかを考えてみたいと思います。


    ◇◆◇


①右翼と左翼の分け方と、その対立軸


 右翼と左翼の違いの最大のポイントは、世界を切り分ける見方の違いです。

 マルクス経済学者の松尾匡氏による「用語解説:右翼と左翼http://matsuo-tadasu.ptu.jp/yougo_uyosayo.html」からの抜粋ですが、この松尾匡氏の解説が一番分かりやすく正しい右翼と左翼の分け方になりますので紹介します。


『世界を縦に切って「ウチ」と「ソト」に分けて、その間に本質的な対抗関係を見て、「ウチ」に味方するのが右翼である。

 それに対して、世界を横に切って「上」と「下」に分けて、その間に本質的な対抗関係を見て、「下」に味方するのが左翼である。』



 もう少し分かりやすくすると、

世界が味方とそれ以外に別れていると断定し、身内側(日本、同盟国、友好国)と外側(日本以外、同盟国以外、敵対国)に分けて、内側を重視し味方するのが右翼。


 世界が階層に別れていると断定し、上層(強者、富裕層、権力者)と下層(弱者、貧困層、庶民)に分けて、下を重視し味方するのが左翼となります。


 ここで重要なのが、右翼と左翼はお互いが互いにとっての対立軸には当たらないと言うことです。


 右翼にとっての対立軸(敵、仮想敵)である円の外側と実際の左翼、左翼にとっての対立軸である上層と実際の右翼は全然違う存在なのです。


 このお互いがお互いの敵を誤認し合っていることが、SNS上で右翼と左翼の議論が全く噛み合っていない最大の原因だと言えます。


    ◇◆◇


​②「クソリプ」を送らない為に


 右翼と左翼がお互いに敵を誤認していることが、対立軸の思想の方からのポストを「クソリプ」と感じる理由の一つです。


 右翼の方は「野党議員やその支持者」を最初から売国奴などと決めつけて敵視していませんか?

 左翼の方は「総理大臣、与党議員やその支持者」を搾取者などと決めつけて敵視していませんか?


 有名過ぎる「孫子」の一節ではありますが、


『彼を知り己を知れば百戦殆からず

 彼を知らずして己を知れば、一勝一負す

 彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し』


とある様に、敵を理解すると同時に自分自身を理解することが重要です。


 自分自身が世界をどの様に見て敵と味方に切り分けているのか、相手が本当に自分にとっての敵(対立軸)なのかどうかを正しく見極める必要があります。


 本来「政治」というモノは与党と野党(その支持者達)が四六時中敵対して、敵視し合って行うようなモノでは決してないはずです。

 綺麗事ですが、与党と野党がそれぞれの視点の違いから生まれる意見を、与党が優先順位をつけて主導することでより良い未来を作って行くのが本来の政治だと思います。

 実際は利権なども絡むので上手く行かないことは多いとはいえ、政治家では無い私たちだけでも、互いに無闇に敵視し合って「クソリプ」を送り合うのではなく、建設的な議論を行なっていく必要があると思います。


 左翼も日本(内側)に属している普通の人であり、右翼も弱者(格差や貧困)を憂いる普通の人なのです。


 自分が「クソリプ」を送らない為にも、お互いの世界の捉え方を理解し、敵視して敵対するのではなく正しく相対することが必要だと思います。

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