23時。

紫蘭。

ー愛おしさと許容


「好き」

「俺も」

「ずっと彼氏でいてね?」

「あたりまえ。大好きだよ」


疲労感と満足感で満たされる23時。

この時間に必ず交わすお決まりのメール。

大好きな彼からと愛を確かめ合う時間は私にとって、何度繰り返されてもこの上なく愛しい。


翌日朝7時。

彼からの愛が注がれた心はわたがしのようだ。幸福感に満たされて今日を迎える。

彼にもきっとそうだろう。と。

心のどこかで毎朝願う自分がいる。

カーテン越しに差し込むし光はどこか私の心と一致する。

幸福感、陽の光だけでは私は満たされない。

不安、カーテンがあるから私の心は安らぐのだ。


私は高校2年生。 

秘密主義で若干人間不信なところがある。

自分の話をするのが苦手なタイプ。

勉強が好きで変わり者の目で見られる。

そんな私の彼も、高校2年生。

社交的で誰とでも仲良くできるムードメーカー的な存在。私とは対照的。

部活の成績はすごくて、全国大会にもでている。とても努力家。

そんな彼を私は本気で尊敬していた。

足手纏いになりたくないと思っていた。

そんな彼を支えられる彼女になりたいと思っていた。


私は1日を終え、今日もメールのやりとりが楽しみだった。

ーおかしい。

連絡が来ない。既読がつかない。

私は考えた。考え込んだ。 

ーなにか迷惑になることしたかな

ー怒らせたかな

ー事故にでもあったのかな

考えるほど辛い。進んでいく時計が壊れているかのように、私の中での時間は止まっていた。

ベットの上で仰向けになり、1人ブラックホールに吸い込まれるかのようにあらゆる可能性を考えた。


その時、電話が鳴った。

私は高揚感と期待と緊張に襲われた。苦しい。見てみると彼からの着信だった。

なぜか、みぞおちがいたんだ。


「ごめん」

「え?」

「俺が部活でいい成績取って強くなるまで待ってて欲しい」

「強くって何?」

「・・・」

「そんなの意味がわからない」

「ごめん」

「私のことは好きってこと?」

「まあ、。」

「なにそれ」

「ごめん」

「わかった。頑張ってるのも知ってる。

毎日努力してるのも彼女の私は知ってる。

強くなったら絶対帰ってきてね?」

「うん絶対に。本当にありがとう。」

「まってるね。がんばってね。」


この日から連絡はなかった。

きっと彼は部活にのめり込んでいるのだろう。

少し無責任だとおもった。私を放っておくなんて。だけど、そんな努力家な彼がどこか好きでそういうところさえ愛しく思ってしまったのが本当のところだ。


8ヶ月経った。

毎日お互い部活も勉強も終わってひと段落する23時の連絡を待ち続けた。

来なかった。


他の女の子と遊びに行ってたことがわかった。


私は言葉が出なかった。

1人、8ヶ月前に取り残された気分だった。

毎日泣いた。泣いた。泣かなくなるまで泣いた。嗚咽して泣いた。

自分を悔やんだ。

ーなんであんな選択したの。

ーなんで待ったの。



私は辛かった。本当に辛かった。

これからは、自分を大切にする。

自分を犠牲にしすぎない。

好き の気持ちだけで許さない。

みんな1人の人間だと考えないとな。

そう思った。


そんなことを思いながら今日の23時を迎える。でも、今日は違った。

今日は幸せな23時だった。

自分の考え方の成長に自分自身が感心した。


明日はちょっと背伸びしてデパコスなんか買おっかな。なんて思いながら眠りについた。

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