第132話 法律
よく考えてみれば勢力として独立した後、ヒノマルサイクツの勢力圏は無法状態となるので急いで法整備を進める。
と言ってもラドン連邦のものをほぼ流用するだけだけど、一部不都合な部分はあらかじめ改変しておく。政治体制自体は独裁寡頭制だからな。選挙関連の法は要らん。
あとついでに環境保護法だの動物愛護法だのそこら辺は全撤廃。制限や規制は増えるほど国としての成長が止まる。既に倫理観0なことやっちゃってるんだから人体実験や動物実験に関する制限も全撤廃だ。流石に人体実験の実験体に関しては重犯罪者か同意のある余命のない者のみとするけど。
「こんなの、工場が浄化槽とかを持たなくなるわよこれ?」
「あまりにも汚染が酷かったら国が工場を1クレジット買い上げると通告しとけ」
「……そんな簡単に国が企業を接収出来る状態は、企業が逃げ出すわよ」
「この通告で逃げ出すならそもそもヒノマルサイクツの勢力圏で商売しようとか考えないだろ」
当然、アリアーナから突っ込みは入るけど企業が国を運営する以上、そもそも他の企業に参入余地はなさそう。……ラドン連邦にある無数の企業とかは、併合後にどうするかなあ。
「絶滅危惧種すら保護しないって認識で良いわね?」
「最悪復元できる以上、絶滅して良いだろ。この世界、人間が生きていく上で絶滅危惧種が絶滅したところで何か影響あるか?」
「……一部団体は暴れ出しそうね」
「暴れ始めたら自分で戦艦の主砲撃ち込むわ」
今のところ、国作りで目指すべきところは『制限無き自由』であり、次点で『これの阻止を行おうとする反政府勢力の根絶』にしている。……たぶんタイムマシンとか相転移エンジンとかは、束縛された環境下で生み出されない代物だろう。
まあ絶滅危惧種を保護する利点や種の絶滅によるデメリットも理解しているつもりなので動物愛護団体とかが自費で広大な土地を買ってそこで絶滅危惧種の保護を行うこと自体は止めない。国としてやらないだけで組織としてやるのは自由だ。
これから先、国力を研究に全振りする以上、無駄な金を使う余地は一切ない。ハイパーリレイによるインフラ整備もゲートウェイの複製が終われば無駄になる可能性が高いので放置。
『地球の海底施設にあるデータベースにアクセスした際、社長の過去の政治手腕も確認しましたが、やはり極端ですね』
「過去の自分って、結局どんな政治家だったんだ?」
『何も持ち合わせていない日本人が、唯一誇れる日本人というアイデンティティを刺激するため、外国人への生活保護費打ち切りや、外国人の所得税増税等の反移民政策を掲げて当選しています。……どうやら移民という存在が問題視されていたみたいですね?』
「あー……未来の日本ならまああり得るか。なんか第三次世界大戦が起こった理由も察したわ」
さて。過去の自分も政治家になったみたいだけど、レイからの情報によるとこれ現職の議員が大量にテロで死んだ後に自分が議員として立候補して当選という流れだな。なんという盛大なマッチポンプ。テロリストが政党作って最終的に第一党になったってマジ?未来の自分がアグレッシブ過ぎる。
……というか未来の日本、海外に買われた土地を対価も払わず接収したり、強制的に人を追い出したり、意味不明なムーブを繰り返しているでたぶん自分が実行役だろうな。国際社会での反発は凄まじいものだっただろうし、よくこれで戦争になら……なったんだった。
何というか全世界の経済をわざとぐちゃぐちゃにして、一早く自国だけ復興させている辺りは色々とヤバイ。自国他国含めてテロは繰り返して実行してるし、それを全部自分がやったとか世界から追放されて当然だわ。大方、レイのサポートありきで動いたんだろうけど日本が世界の主導権を握った理由も分かった気がする。……この政治家、死んだ90歳まで現役かよ。
「……あれ、レイがこの歴史把握してるのは問題ないのかな?」
『私はなるべく得た知識に沿って歴史を動かそうと思いますが……恐らく、私が何も助言しなくても未来の社長ならこうなりそうな気がします』
「え?」
「……私もそう思うわね。人としてのブレーキが無いのよ」
「いや、最低限のブレーキはあるぞ?」
「最低限でもあったらヒノマルサイクツはここまで大きくなってないのよ」
レイやアリアーナに色々と突っ込まれながらも、法律の草案を纏めたらさっさと公布。そして施行。一応今勢力圏内の居住可能惑星にいる人は全員レプリコンから解放された住民しかいないので、特に反抗する者もなく受け入れるだろう。この法案が施行されたところで、一般人の日々の生活というものは変わらないように調整したしね。
……ただまあ、勢力圏外には通用しなさそうだなあ。
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