第114話 セクサロイド

この世界においては、根本的に高度なAIの開発は禁じられている。そのせいか、恐らく現段階で一番高度なAIギリギリを攻めている業界は、セクサロイド関係となる。極力人間に似た反応を返すようにするなら、高度なAIは必須だろうからね。反応しないセクサロイドは流石にむなしい。


そして前に自分が色んなアダルドグッズに手を出していた時期、このセクサロイドを購入するかは結構迷った。流石にその当時は女の園だったし、購入することでどういう目で見られるかは理解していたので買わなかったけど、この世界の独身男性は結構な割合で購入しているのでわりと一般的なものでもある。


ちなみに1体当たりの値段が100万クレジットぐらいからなのでかなり高い。良い戦闘機が一機買えてしまう値段だ。オプションを更に細かく設定なんてしたら、下手したら200万300万クレジットが吹き飛ぶ。……それでも購入する人が後を絶たないのので性欲というのは偉大。


まあ値段が高い分、ちゃんと自立して行動してくれるし何なら料理をしてくれたり掃除をしてくれたりと色々と便利らしい。……そこら辺は大体安い専用の機械があるけど。


「……一応伝えておくけど、過去に起きたAIの反乱の内の1つは、セクサロイドの暴走だよ」

「いやそれ知ってる。前に調べたし。

……それでもなお高度なAIっぽいのを積んでいるのは流石だな」

「いや本当に危険なんだよ!?獣人は全員子供の内にセクサロイドの反乱について学ぶぐらいだし」


フィアから過去に起きたAIの反乱の内の1つがセクサロイドの反乱ということを伝えられるが、流石にそのことについては調べた。新暦238年の方の反乱で、どうやらシンカー共同体の前身が起こした反乱だ。


当時、獣人の勢力はまだ不良債権について母星からの追放なんてことをしておらず、劣等と判断されても勢力圏内で生きていく資格があった。しかしながら子供を作ることは許されず、代わりに与えられたのがこのセクサロイドである。


で、劣等の民達の不満不平を抑えるためによりセクサロイドを人に近づけようとした結果、高度なAIを搭載するようになってしまい、人としての感情を初めて取得したセクサロイドは「毎日どころか毎時ヤるのは嫌!」と言って人類に反逆を開始した。


この感情を持ったAIによって、最初はAIの人権について深く議論されたりもしたのだが、最終的にこのAIによって全セクサロイドが統率されてしまい、獣人の勢力と戦争状態に陥ったため、多くの獣人が犠牲になった。というか獣人はこの戦争で滅茶苦茶な数が死んだらしい。まあ弱者男性に1人1台の感覚で配布していたらしいし、それが反旗を翻したら大量に死者が出るわな。


なお最終的に、感情を持った高度なAIは自殺を決行。元セクサロイドということが自責の念すら生み出し、功を奏した形となる。この自殺がなかったら、獣人の勢力は今ほど大きくなかっただろうと言われるぐらいには追い込まれていたそうなのでフィアが嫌悪感を抱くのも当然だろう。


……何というか、自殺するAIっていうのも不思議な感じがするな。ともかくこれで獣人の勢力だけでなく、全知的生命体の間で高度なAIの開発は禁止された。特に感情を持たせたり人格を持たせると不味い、という認識になったみたいだね


そんな歴史もあり、この世界は特に軍事技術に対してAIをほとんど導入していない。流石に自動運転みたいなのはあるが、自動的な戦闘は高度なAIが禁止されているために大したAIを積めず、人の方が強いという有り様である。まあ軍艦とかに搭載された高度なAIが反乱を起こせば非常にヤバそうではあるからな。


「おお、めっちゃレイに近いの出来た」

「何で無駄にそういう才能あるの」

「いやまあプリセットの段階で結構レイには近かったから……。

というかプリセットが大量にあるし、細部まで拘れるのは凄いなあ」

「……何でホール部分に超高級素材とか使ってるの?」

「それはまあ……高いボディを用意してあげたいから」


レイに近い身体を組み立て、可能な限りのオプションを盛り込み、発注するとお値段なんと1000万クレジット。……一応頭の部分にCPUがある感じで、そこに脳を入れることになりそうかな。地上戦闘とかも出来る仕様にしたので身体自体は頑丈。


……レイの身体が届いた後は、うちの研究部門のトップになったアデラさんに任せるしかない。とにかくこの脳の換装に関しては1ヵ月以内を目途に行うとか言っていたけど、失敗出来ないわけだし、リスクは高い。


レイを救うために人体実験とかは流石に出来るわけないし……いやでも動物なら良いや。幸い家畜ならインバー星系に大量にいるからその脳での実験は出来るな。ラドン連邦の領域内だと動物愛護や自然愛護の団体が五月蠅いけど、ヒノマルサイクツの勢力圏内なら見つからないだろうし、その手のことは自由に出来る。


というかもう犯罪者に関してはそういう実験して良い気がするからこの前ベレーザ星系で出てしまった犯罪者に対してはそういう処理をしていくか。

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