第110話 奪取

レンス星系に久しぶりに赴くと、各小勢力が順調に育ってて、特にヘラスタ工業は巡洋艦を戦力として保有している成長っぷり。なんかそろそろマフィア間の抗争も始まりそうとの報告が入って来ていたため、急いで全勢力に喧嘩を売り始める。


「レンス星系の主勢力であるヘラスタ工業、サイオン旅団、メノキシ製薬は全戦力と全財産を奪うぞ」

「全部合わせると宇宙大麻はどれぐらい?」

「2万Pちょっと超えるぐらいだから12億クレジットかな。

……これが大した額じゃなくなってきた辺り組織が膨張し過ぎている」

「それとは別に、駆逐艦や巡洋艦の確保も行えるから艦隊動かすメリットはあるね」


レンス星系に巨大空母のエルダープライズで乗り込み、次いで第1戦闘部隊と第3戦闘部隊がレンス星系入り。手始めにヘラスタ工業の宇宙大麻製造モジュールを襲うと、ネルサイド協定の時よりかはあっさりと全部吐き出した。


力量差がよく分かってるなと思ってたら、何故かやって来たラドン連邦の駐留軍が宇宙大麻を持っていることを理由に射撃し始めたので軍が犯罪者に協力してる。レンス星系の駐留軍、というより北東第二セクターの軍が丸々いるなこれ。前にランタンさんが来た時はまだギリギリ正常だったのに、短期間で随分と侵食されたものだ。


こちら側の保有戦力は空母1、戦艦1、巡洋艦3、駆逐艦18、戦闘機380で、ヘラスタ工業の戦力は巡洋艦2、駆逐艦14、戦闘機120と正直相手にならない規模だったが、ここにラドン連邦の北東第二セクターの正規軍が丸々いるとなると話が変わる。


ラドン連邦の北東第二セクターの持つ軍規模は、戦艦1、空母1、巡洋艦12、駆逐艦30、戦闘機400前後と北東第四セクターのことを考えたらかなり大きい。まあ中央に近いし北東第二セクター自体が大きいから仕方ないとはいえ、これ相手にするのかあ。


『突撃じゃあ』

『大佐殿!?相手あのヒノマルサイクツですよ!?これ大丈夫ですか!?』

『突撃じゃあ』

「……何で相手、こっちに聞こえるチャンネルで通信しているんだ?」

「この空母は一応ラドン連邦軍のチャンネルと通信出来るからじゃない……?」

『攻撃して来たです!テドドンが傷ついたです!』

「くそ、こうなったらラドン連邦の戦艦を拿捕するぞ。幸いおかしいのは司令官だけっぽいし」


これラドン連邦の戦艦奪っても返さないといけないのかなあ。そんなことを思いながら、空母から戦闘機を一斉に繰り出すと敵の空母も戦闘機を一斉に繰り出す。そしてその戦闘機同士の戦いは、こちら側が圧倒している。


あれ?なんかめっちゃ弱いな?一応この空母に乗せている戦闘機乗り達は獣人達の中の選りすぐりとはいえ、ここまで一方的な戦いになる?


たぶん戦闘機のスペックはこちらの方が上だけど、第二次世界大戦の兵器で例えると21型と52型の差ぐらいしかない。こちらは縛りがないから全体的に良い武装にはしているけど、誤差レベルのものも多い。


……あ、そっか。こんな内側の土地で実戦経験があるわけないな。こちとら1年近くレプリコンと殴り合いを続けて実戦経験を積んだパイロット達だ。向こうも訓練や実践に限りなく近いシミュレーターで経験は積んでいるだろうが、毎日実践してるような奴ら相手には勝てないか。


しかしまあ、こんなことになるならヘルキャットとの契約は延長しておいた方が良かったな。延長しててもここまで連れて来たかは分からないけど。


「戦艦の武装破壊に注力したら移乗攻撃仕掛けるぞ」

『拿捕する気です!?』

『……やると思った。

第3戦闘部隊は全軍でヘラスタ工業の戦闘機の数を減らす。一応伝えておくが、ラドン連邦の軍人は基本的に強いぞ』

「あー……移乗攻撃して船内を制圧出来ないかもしれないのか」

「その点は我々を信用して欲しいですね」

「まあ何とかなるだろ。敵戦艦内に人自体は少ないし」


無事戦場は優勢になってきたので、戦艦への移乗攻撃を開始しようとするけどここでランタンさんが警告を入れてくれる。……ちょっと不安だけど、センイチちゃんが任せて欲しいというので移乗攻撃用のポッドを射出。


その後、無事船内を制圧したけどラドン連邦の軍人さん達は全員討ち死にしていた。センイチちゃんによると捕える余裕はなかったようで、随分と抵抗が激しかったとか。それでもこちら側に1人も戦死者が出ていないのは凄いな。2人ほど重症ではあるけど。


『あー、あー。マイクテスト中。

ラドン連邦軍は戦闘行動を停止するように。そちらの司令官は既に討ち死にしている』

「うーん、聞いてくれるかなあ」

「あ、撤退始めやがった。

……じゃあ戦艦貰っても良いよね?」

「正直犯罪者と連携していたラドン連邦軍側は言い訳出来ないから良いと思う」


向こうの戦艦の確保と、司令官の戦死を伝えるとラドン連邦軍は撤退を開始。どうせなら空母も確保したかったけど真っ先に逃げられたので確保は出来ず。まあ戦艦が手に入っただけでも儲けものか。もうボロボロだし修理費だけでも結構かかりそうだけど、それでも一から建造することを考えたら凄くお得だし……やっぱり略奪は儲かるなあ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る