第102話 インバー星系

ベレーザ星系からインバー星系へと移動し、インバー星系の確保を目論むとレプリコンの大規模艦隊も現れたのでここまでヘルキャットを雇っていて良かったと思った瞬間である。


艦隊として、戦闘機を大幅に増やしたヒノマルサイクツの戦闘機は1000機を超える。ベレーザ星系の人間を元に戻す作業中に、ひたすら艦船製造モジュールを拡張し続けた結果、戦闘機は1日で120機ぐらい作れるようになったからな。


ベレーザ星系で戦闘機乗りとしての適性が高かった人を大量に戦闘機に乗せた結果、前線では良い具合に回避盾が仕事をしている感じになる。たまに攻撃を受ける戦闘機もいるけどすぐに撤退してもらうことで時間を稼ぐ。


その間に、こちらの戦艦と傭兵団のヘルキャットがアウトレンジで敵戦力を削る形だね。今シルフィが乗っている戦艦の主砲を撃っているのは、一時期隊長も務めた射撃能力特化のフタエ。


……戦艦の主砲って火力えげつないわりには命中し辛いけど、その主砲での攻撃を百発百中で当ててくれるからレプリコンの駆逐艦以上の大型艦船がどんどん落ちる。ヘルキャットも似たような感じで敵主力を削ってくれるので普通に契約分は働いてくれたな。


「……相手の戦艦が10隻居た時点でエレーザ星系まで帰って要塞を盾にして戦おうと思ったんだけど、わりと何とかなったな」

「向こうの戦闘機の数は少なかったし、シンカー解放戦線に結構哨戒部隊を削られているみたいだね」

「そのシンカー解放戦線に毎月2000機ぐらいは戦闘機出荷してるのに全然シンカー共同体相手に優勢にならないのは何で……」

「毎月2000機だと全然足りないんじゃないかなあ……」


パイロットを確殺してくることがあまりないので、戦闘機が撃墜されてもパイロットは脱出して帰還出来る、ということがわりとよくあるこの世界。戦闘機だけがただただ消費される戦争となっているので生産力が重要となっている。


……戦闘機以外だと生産に時間かかるし、コスパを考えると全て戦闘機で組んだ艦隊が強いんだけどそもそも凄い戦闘機乗り自体が貴重だから戦闘機偏重ドクトリンを採用しているところは今のところシンカー共同体ぐらいかな。


「戦艦生産出来るようになるまであと半年はかかるからなあ……」

「……あれ?結局大型艦船製造モジュールも作るの?」

「まあ特大型建築艦とかも最終的には自前で持ちたいし……戦艦や空母作りたいし……」

「ライセンス費用はたぶんとんでもないことになると思うんだけど……」


最終的には、全部自前で作れるようになるような計画を立てているので来年には空母や戦艦をどんどん生産ラインに乗せて戦力を拡張することが出来る。……どこでラドン連邦から待ったがかかるのかは見物。


そろそろエレーザ星系は戦闘機で埋め尽くされてきたけど何も言われてないから放置されているんだとは思う。エレーザ星系の要塞がラドン連邦の持つトレーヌ星系の要塞群に匹敵するような規模になって来てるのに何も言ってこないしね。


元々エレーザ星系の要塞は対レプリコン用に建設を進めていたけど、最終的には対ラドン連邦用の要塞となる。レプリコンの勢力圏を削って、各居住可能惑星を手に入れて、ラドン連邦と敵対することになったらエレーザ星系が対ラドン連邦の最前線だからね。


艦船製造モジュールや替えの効かない施設が大量にあるので、エレーザ星系だけは死守するし、戦闘機や駆逐艦が出来たら即前線に投入できるというのも価値がある。


……マレーザ星系を挟んでラドン連邦のトレーヌ星系に攻撃仕掛けるとしたら、エレーザ星系に建造ステーションがあるの超便利。これが元々レプリコンの保有、維持していた施設であることを考えるとどこまで誘導されているのか。


「お、テドムシがレプリコンの戦闘機食べてる」

「もしあれが人の乗ってる戦闘機だったら中の人はパニックだっただろうね」

「あれまだ生まれてから1年経ってないのおかしいだろ……」


この戦闘で、テドムシが実践投入されたわけだけど戦闘機の光弾やミサイルを受けても余裕というのはちょっと生物としておかしい。いや宇宙空間を自由に泳げる時点でありとあらゆる生物に喧嘩売っているんだけど、その上で戦闘機食べる姿は結構おぞましい。たぶん中に人が居たらパニックになるだろうな。


この宇宙生物を軍として真面目に運用しているというサイゴート共和国とは敵対したくない気持ちがある。過去に何度かテラニド帝国の侵攻を退けているらしいし相当強いのだろう。


最終的に、インバー星系の確保のための戦闘で沈んだ戦闘機はごく僅かで敵戦艦を3隻沈めているなら大勝利。……1078機中14機が沈んでいて、これが初陣だったベレーザ星系の住民が1人死んでいるのは非常に残念。いつか死者が出るのは分かっていたことだし、心構えはしていたつもりだったけど、結構来るものがあるな。


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