第75話 過去
「……生き地獄かな?」
「……生きてないだろもはや。自由意志がない時点で脳死と同じだし。
惑星で暮らしてた記憶自体はあるんだ?」
「はい。ずっと意識は寝ているような状態だったんだと思いますが、一部の動作は記憶させられていました」
言語の概念を知り、言葉でレプリコンでの生活を説明出来るようになったレイは、インバー星系に居た頃の記憶をある程度保有している。どうやら工場での作業や、食事排泄等の各種の動作は幾つか記憶させられており、レプリコンにとっては最小限の労力で働けるよう改造されていた。
レイは食品工場で働いていたということで、加工元を色々と見ているようだけど人の死体の再利用はもちろん、便尿も混ぜて食事が作られていたらしい。よく死人が出なかったなと思ったが、使える内は無理やりでも延命させられる環境のようで彼女は震えていた。
長持ちする個体だと、インバー星系でも60歳ぐらいまでは生きられるようだけど大抵は40代50代で死ぬ地獄。生まれたての赤ん坊の頃から行動を支配されているから0歳で就業が、身体にガタが来る40代で大半の処理槽行きが決まってるとか嫌だなあ。
あ、ここでも優生主義は取り入れられているようで長生きした個体は60歳を超えてから子作りに励むようだよ。機械に搾精されているだけというか何の快楽もなくただ射精してるだけっぽいけど。
……どうしてそんなことまでレイが知っているかと言うと配膳係もやっていたからだな。特定の職に就いた個体は基本的にその場から動かさないため、食事等は近くの工場で働いている人間が直接口まで運ぶ。というかレイが外に出ていて、自分達の目に付いたのはそのため。
配給とかを全て機械化、全自動化しない辺りは未来視点で何らかの意図があるのだろうか。まあ拾えた女の子がわりと地上を歩き回っている存在で助かったな。お蔭でまだ他の人よりかは運動能力がマシっぽかったようで、過去に持って帰ろうとした人は大抵即死していたらしい。まあその場から動かない人が大半だから仕方ないんだけど。
「……本当にありがとうございます」
「いやお礼言う必要はないぞ。自分の勝手な拉致でレイは今後人として生きることになったんだし。
……機械に支配されていた方が色々と悩まずに済んだかもしれないし」
「そんなことはないです。少なくとも、私は感情を持てたことが嬉しいです」
「それはそう思えるように知識を植え付けられたからだよ。それはそうとレイちゃん20歳らしいから私より年上だね。子供もちゃんと産めるらしいよ」
「……子供産める情報必要?」
「不要な臓器を全部取っ払ってるかもしれないから一応必要かなあっと。臓器再生出来ないこともないけどお金と時間がかかるからね」
レイは一通り胃の中を全部ぶちまけて胃液しか出なくなった後、色んな食べ物を食べて感動したり美味しいと叫んだりしているので生きるために必要なもの以外全部撤廃されていたわけじゃない模様。その後、感謝の言葉を述べて来たけど拉致したのは完全にこちら側の都合だからなあ。
というか顔が幼いせいで20歳には見えない。髪はちゃんと生えて来て、要望通り黒髪のロングヘアだね。……全体的に肉付きが良くなったのも自分の希望通りだし性癖開示されているみたいで恥ずかしい。というかよく見たらゲートウェイの管理AIが映像で作りだしたメイドと瓜二つだわ。
「しかし首都星系は色々とあるな。学習装置もそうだけど、変な玩具とか大量にある」
「最新式の自動調理器とか新しいプリンターとか買う?」
「空母にあるのがまず最新式だっただろ。
……このテープ便利そうだし買っておくか。お前らも好きなもの買って良いぞー」
用が済んだあとは首都星の探索を始めるけど、首都星系なだけあってショッピングモールみたいな建物にはありとあらゆる物が売っている。全部配送じゃないのは意外。まあ直接買い物したい人も多いか。現物を見ることの出来る利点は多いし。ホログラムだとどうしても質感やら重量やらがね……。
自分はとりあえず他の星系のステーションでは見たことが無かった珍品の類を中心に、多機能ガムテープみたいなものやセグウェイのような浮遊する乗り物を購入。浮遊するセグウェイは空母内での移動に便利そう。通路全部平らだしわざわざ浮遊する意味はないけど。
「ソファーが浮遊して移動するのは色々と楽だなと思ったらベッドまであるのか」
「そこら辺は骨董品の類だけど稀人から見たらそりゃ珍しいよね……」
「……筋肉衰えそうだな」
「いやそこは筋肉鍛えるこれとかこれを使おうよ」
女子面子はお金を使うとなったらとりあえず服なんだけどそこら辺は万国共通か。基本制服だけど非番の日には普段着を着ているからオシャレしたい気持ちはみんな持っているものなのかな。……レイにメイド服を買ってあげるフィアはもう確信犯である。レイを雇うならメイド的立ち位置になるだろうし流れとしては自然なんだけど作為を感じたよ。
そして滅茶苦茶似合っているという。……遥か未来でもメイド服が存在していることには驚いたけど、まあ、その手の文化は残るか。
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