第67話 投票
幾つかの孤児院を巡り、用を済ませたイントール星系からの帰りにハストール星系に寄って投票を済ませておく。別にネット投票というか通信端末からの投票で済ませても良いけど、この世界の投票という文化に触れてみたかった。
……そして紙での投票というか、マークシートでの投票は存在した。投票用紙にムダ金を使わないようにするためか、結構小さなマークシート。全部電子化してなかったことにびっくりだよ。何だかんだで紙での投票も残ったんだろうな。
まあ紙の本すら生き残っているし、利権か僅かな需要のためかは分からないけど少なからず自分の常識が通用する所もあるのは嬉しい。あとなんかヒノマルサイクツが北東第四セクターでは英雄的な称えられ方をしていたけど、どうやらネルサイド協定との戦争でネルサイド協定に致命傷を与えたことについて評価されたっぽい。
何で今このタイミングで広まっているのかというと、ネルサイド協定から離反者が出てラドン連邦へ逃げて来た人が最近多くなったためだ。ネルサイド協定側の事情も把握され、ヒノマルサイクツの与えた影響が馬鹿でかいことをラドン連邦側も認識したらしい。
地味にレントール星系を落とされかけていたみたいだし、あそこの防波堤を食い破られたら北東第四セクターの大部分を持って行かれてた可能性はあるからな。しかしまあ元ネルサイド協定の人達がハストール星系にいるということで、たまに自分達を見かけるだけで逃げる輩もいる。
……逆ギレして襲って来るかもと警戒はしていたけど、向こう側はヒノマルサイクツに対して恐怖の感情しかないらしい。一応あいつらは宙賊行為というか人攫いや麻薬密売をやっていたのに何でそんなに怖がるんだ。世間的にはあいつらの方が遥かに怖い存在なのに。
「……あ、不味い。再分配党からの立候補者が13位にいる」
「えっ、通るの!?
……思っていた以上に有名になったのかな」
「単に上位が票を集めまくった結果、残り少ない票を食い合った感じがするから固定票があったっぽい再分配党が有利だったんじゃね?」
「まあ少なからず元からの支援者も居たしね。それに加えて、自分達は全員投票したし、私の知り合いにも声はかけておいたよ」
投票結果は結構すぐに出て、再分配党は北東第四セクターに1人しか立候補者を出さなかったんだけどその人が当選をしていたのでフィアもびっくりしていた。これは何らかのアクションが向こうから来そうな予感。というか13位と14位の差が1000票という近年稀に見る接戦だったから本当にこれ自分達のせいでひっくり返ってそうだな。
元々数議席がデフォな再分配党だから、1議席増えるか否かは大きいだろう。こんなアホみたいな国策掲げている政党に、バックがいないわけないので調査も進めておくか。テラニドカンパニーではなさそうだから……パラディ社かシンカー解放戦線かなあ。
第一党は変わらずラドン人民党で301議席を確保。……第二党にテラニド人民党があるのは色々と侵食されてるな。金の力で票すら買えるからテラニドカンパニーは頑張れば過半数の議席を超えるんじゃないか。まあもうすでにテラニド帝国があってそちらを経営しているから無理して議席確保しなくても良いのかもしれないけど。
獣人が主に支援している政党とかはないみたいだけど、将来的に出来たら獣人の数的に脅威になりそう。まあ今回の選挙だけでラドン連邦の弱体化は無理だけど、次辺りは仕掛けたいね。
それまでは再分配党にも良い顔しとこ。あとは取材とかも積極的に受けるか。ネルサイド協定相手にやっていたことは下衆外道だけどラドン連邦では英雄扱いっぽいし、再分配党については「貧しい人を救いたいんだあ」とか言っておけば民衆受けは良いでしょ。
「というか今はレプリコン相手の防波堤やっているから世間受けは結構良い感じなんだね。あれだけのことをしておいて良い評価貰ってるんだね……」
「まあネルサイド協定がデカい宙賊組織だったのが大きいわ。押収した宇宙大麻の量も多かったし」
「押収……?カツアゲじゃなかった……?」
「押収ってことにした方が都合良いから今から押収したってことにしておこう」
良い人ムーブするにも元ネルサイド協定の人が邪魔になりそうだけど、この様子じゃ今更歯向かおうという気概のある人はいないかな。……あ、そうだ。直近のシレーネ星系について聞いておこう。
「最近ネルサイド協定から逃げて来た人で採掘ギルドに入った人います?」
「……いたとしてどうするつもりだ?」
「いやまあ最近のシレーネ星系でどういう戦いがあったのか聞きたいなと」
「その辺の情報ならこちらから渡す。ちょっと待ってろ」
久しぶりに採掘ギルドのおっさんに会いに行き、元ネルサイド協定の人を探していることを伝えるとギルド内で震えた人が何人かいたので数人はここに居そう。
まあシレーネ星系を含むネルサイド協定の動向というのは採掘ギルドでも情報として纏めているようなので、ありがたくそれを買い取る。
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