第44話 人間
「テラニドカンパニー、エマーレ星系支店にようこそ。本日は何をお求めでしょうか」
「ステーションの建築……というか運営管理が出来る人材が欲しい」
「ステーションの管理運営でしたらD棟の14階へ移動して下さい。そこで専門の販売員が案内いたしますが……希望の人材は人間の方がよろしいでしょうか」
「あー、希望出来るなら人間でお願いします」
「かしこまりました。それでは右のエレータに乗って下さい」
「……エレータ?」
「こっち!恥ずかしいからさっさと行くよ!」
受付のトカゲ女に今日来た要件を言ったらエレータに乗れと言われて疑問符が浮かんだがエレベーターみたいな乗り物のことだった。ついでにフィアがちょっと恥ずかしがっていたけどエレベーターも知らない田舎者だと周囲に思われたってことね。
そしてそのエレベーターみたいな乗り物に乗るけど、建物の外側の空間を移動するようで、さっき建物の外から見えてた小さな箱はこれかあ。別の棟の高所にすぐ移動できるし明らかに未来技術ではあるんだけどワープとかはしないのか。コスパの問題かな。
D棟の14階に着いたら扉が開き、中は普通のオフィスって感じ。……リモートワークしてない近未来って何かやだね。まあたぶん出社して管理する方が効率良いんだろうな。
案内してくれるのは受付と同じくトカゲ顔で、今度はたぶんおっさん。外見で年齢分からないけどたぶん偉い人なんじゃないかな。しばらく部屋で待っていてくださいと言われ、放置されていると今度は女性の人が入って来る。何か見たことある人だな。
「まさか、ステーションの管理運営希望者ってあなた達?」
「……ん?
あ、アリアーナさんか」
「あー、テラニドカンパニーの捜査局員の人だ。
何でこんなところに?」
「……前に書いたあなた達の報告書が信用されなくてここの支店に飛ばされたのだけど、今このエマーレ星系にステーションの管理運営の資格やノウハウを持っている人間が私だけだったのよ」
見覚えがあるなと思ったら声を聞いて確信したけど前に監査員として自分達の船に乗ったアリアーナさんだね。結構きつい口調していたから覚えているし、何かずっと怒っているような感じの人だった。
「というか採掘船団……というよりも略奪傭兵団が何のステーションを運営するのよ……」
「まずはスクラップ処理槽のステーションからどんどん増設していきたい」
「…………保有戦力は?」
「空母1、巡洋艦2、駆逐艦12、戦闘機340」
「起業申請日って新暦2023年の10月30日よね?
……待って、空母持ってるの!?」
「来月就航予定の最新鋭軍用空母『エルダープライズ』だから厳密にはまだ持ってないけど持つ予定」
「あー、何故か納品先が変わったと噂のアレね。
……あなた達はラドン連邦の軍を相手に何をしたの!?」
何というか、ツッコミ気質な人なんだろうなあと思う。で、この人がテラニドカンパニーの商品ということになるけどお値段は1年間で200万クレジット。年1%の昇給も寄越せとのこと。まあまあ安いというか知識ありそうだし仕事はちゃんとしてくれそうだしお買い得だな。
そして契約内容としては社長秘書的なポジションでの採用になるらしい。社長の補佐という業務内容に沿った内容であれば、アリアーナさんは如何なる命令にも拒否権がないらしいのでたぶんグヘヘ的なことも含まれているのだろうけどそれで病まれても困るしそもそもそっち方面は困ってない。この世界のアダルトグッズは色々と凄いし。
……あっ、契約終了時に5体満足で生きてなければ結構な額のお金を取られるな。死亡時最大で2000万クレジットはちと高い。死んでもらっては困るので基本的には自分と同じ艦船に乗り込ませて、護衛も付けとこ。
あとは完全な引き抜き時のお金だけどこれはと企業側に1500万クレジットのお金、アリアーナさん本人に500万クレジットのお金が必要だからこちらも2000万クレジットか。……んー、やっぱり派遣社員を雇うのってお金かかるなあ。
「でもボーナスとかも含めたらうちって一般隊員でも一月で30万クレジットぐらい渡してない?」
「え?嘘だろそんなに渡してるか?」
「……ポンと全員にボーナスで1万クレジット渡すの今月何回あったと思ってる?」
「……4回+1回は10万クレジットで計14万クレジットだな」
でもよく考えたらヒノマルサイクツの一般隊員と同額程度だし、まあステーションのあれこれを出来る人員は必要だから雇う。アリアーナさんも天を仰いで考え抜いた後、了承してくれたし。
わりと大きな買い物ではあるけど貯蓄ならまだまだあるので幾らでも無駄遣いが出来る気分。この後の計画としてはスクラップ船をリサイクルする炉を建設して、それで船体部品を作り直す工場を建てるって感じかな。それが軌道に乗ったら採掘部隊も拡張して資源から船体部品まで一貫して生産出来るようにして……最終的には、艦船を自力で建造できるようになりたい。
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