第43話 目標地点

「最終的な目標はトレーヌ星系の奥の奥の星系、エレーザ星系だ」

「……確か、元々資源が豊富にあったことで有名な惑星です。ですがそこ、レプリコンの星系で向こうもそれなりに戦力は配備しているはずです」

「ああ。巡洋艦1、駆逐艦6の艦隊が6艦隊あったから合計戦力は巡洋艦6、駆逐艦36だな。……勝てないと思うか?」

「レプリコンの艦艇は、旧式も多いですから何とかなりそうな気もしますね」


十分過ぎるほどの戦力を確保したヒノマルサイクツは、星系の確保に乗り出す。前回レプリコンの勢力圏で逃げまわったのは、その確保する星系を探すためだ。


資源が多い星系ほど、配備している戦力が多いレプリコン。その中で、比較的戦力の割合が少ないところを狙う。トレーヌ星系の隣の隣の星系なので、トレーヌ星系から侵攻する感じで星系を分捕る感じになるかな。


というか空母のスペックが凄いからこれだけである程度はゴリ押し出来そう。向こうも空母はあるし向こうの主力がこっちに来たら自分達は一発で負けるけど……そんなにレプリコンも余裕なさそうなんだよね。


何というか、新規建造艦でも艦船のアップグレードをしていないから最初期は物量で圧されていたけど今は質の差のお蔭で結構撃退出来ている感じ。……脅威ではあるんだけど人類同士の戦争の方が深刻になってくるぐらいには放置されている。


軍事部門の2人から「まあ行けると思う」という返答を貰えたので、戻ってきたフィアにエレーザ星系確保計画を話すと少し考え込んだ後、フィアははっきり言った。


「正直私達だけで星系基地を建てるってたぶん無理だと思うよ。ラドン連邦の庇護下の勢力として星系丸ごと領有するなら色々と手続きも必要だし」

「んー、金はあれば星系基地を建てることが出来て、即星系保有、というわけにはいかないか。そもそも建て方からして分からんし。何なら元ラドン連邦の領域だし」

「建て方については特大型建築艦を借りることになると思うけど……専門家を雇ったら?お金あるでしょ?」

「……募集してそういう人材が来てくれるか?」

「来なさそうなら買えば良いと思うよ。テラニドカンパニーなら売ってるんじゃない?」


星系基地を建てるなら、それ用に人材確保をするべきだと。その人材についてはテラニドカンパニーで購入したらという案も出してくるけどテラニドカンパニーってそういう人材の売買もやっているのか。いや、どちらかというと派遣業かな?


「『何でも売ります』が売り文句で実際にテラニドカンパニーは運営している国ですらお金があれば買えるよ。……今の値段は大体2200垓クレジットだって」

「テラニド帝国には禁制品もないし、人手すら買えるのか。……一瞬戦闘機乗りを買おうかと思ったけど、たぶん高いよね?」

「高いと思うし孤児院の子達より扱い辛いだろうから、買うなら特殊な知識を持ってる人に絞った方が良いかな」


一先ずテラニドカンパニーの大きな支店へ行って、ステーションの運営やら資産運用も出来る優秀な人を買ってみようかと判断したのでエレーヌ星系から南に移動して北西第四セクターでは比較的大きなエマーレ星系に移動。お、交易ステーションの規模が明らかに大きい。……本当に今まで辺境に居たんだな自分達。


「ここからはハイパーリレイを使って首都星系まで一直線に行けるよ。そんなに時間はかからないから首都星系まで行く?」

「いや、ここの支店に入ろう。ハイパーリレイ使っても丸一日かかるんでしょ?」

「10星系以上は通過するのに丸一日で済んでいるのは凄い事なんだよ?ハストール星系からレントール星系、レントール星系からエレーヌ星系、エレーヌ星系からエマーレ星系まで3星系しか通ってないのに丸一日かかってるし」


ハイパーレーンを繋げて高速化させたハイパーリレイは、莫大な金を投じられて作られた宇宙の高速道路って感じで、料金がかかります。この規模の艦隊だと数万クレジットは飛ぶんじゃないかな。流石に「ちょっと首都星系見たい」でする寄り道じゃない。首都星系の方が人材多そうだけど、その分高そうってのもある。


エマーレ星系にある居住可能惑星エマーレⅠの『テラニドカンパニー エマーレ星系支店』はハストール星系支店より大きいというか超巨大なビルが5棟続いている感じ。出張所という言葉がピッタリの、ステーション内にあるハストール星系支店と比べたら天と地ほどの差があるな。


というかここで北東第四セクターと北西第四セクターの全ての支店を管轄しているようなので大きな支店だ。一瞬ここが本社なのかと思ったけど支社なんだろう。


中央の棟の1階は店舗みたいになっているので普通にアポなしで入れる。……流石にちびっ子の護衛が複数人いるのと、ほぼ獣人の女性しかいない団体が地上を歩いていたら目立つかなと思ったけど、結構惑星上の人種がバラバラだし団体も多いからあまり目立ってなかった。


店の前まで来たら護衛面子には自由時間を与えて、フィアとシルフィ、イザベラさんとセンイチちゃんの4人を連れて中に入る。……宇宙船の発着場からこの建物の近くまでの移動は自動運転する大きな車みたいな乗り物だったんだけど、SF感ないな。浮いてるし、たぶん色々な未来技術が使われているんだろうけど本質的には車と一緒だ。

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