第16話 目標

「チタンシリコン合金を作る工場を建てようとしたら幾らかかると思う?」

「それ一介の採掘人だった私が分かると思う?」

「そりゃそうだ。……テラニドカンパニーに直接聞いてみるか」

「……本気で建てる気なんだ!?」


フィアさんにチタンとシリコンの合金を作る工場について、幾らで建つか聞いたら「知るか」との返答。仕方がないのでテラニドカンパニーに問い合わせてみたらざっくり1億クレジットとの返答が帰って来たので先は長そうである。


というかチタンシリコン合金を作ろうと思ったら高純度のシリコンウェハーを作る工場やら精製チタンを作る工場やらをまずは作らないといけないようなので簡単には出来ないらしい。


ということでまず手を出すならシリコンウェハーを作る工場だ。需要がとにかく多く、作ればまず間違いなく売れる。ただシリコンウェハーを作る工場自体がわりとあるので、利益率は低い。1P10クレジットのシリコンから、1P15クレジットのシリコンウェハーが出来るけど加工工程でエネルギーを消費するので人件費も考えるとわりと薄利。


精製チタンを作る工場の方が儲かりそうな感じもするけどこっちは買い手が見つかるか微妙。


……いや、この世界は恒星があれば太陽光発電の要領で幾らでもエネルギーは採れる。導入費用さえ賄えれば、シリコンウェハーを作る工場を建設する方が将来的には良い。どうせこの近辺の希少資源は自分が掘りつくすし、後に残るのは膨大なシリコンのみ。それを活用するなら、少しでも加工して高くしてから売った方が良い。


そもそも採掘で採れる資源って、わりと買い叩かれてるっぽいんだよね。それこそ設備とエネルギーさえあれば、シリコンとチタンからチタンシリコン合金を作れて、ほぼ5倍前後の価値になる。工場建てたいと思うのは健全な思考だと思うわ。そしてゆくゆくは自分達だけで造船まで出来るようになれば……。


あ、またチタン1万Pが100万クレジットのオファー来たから明日もチタン採掘だな。船体部品の大元となるチタンが不足しているということは、船が沢山作られているんだろうけど……戦争とかに費やされてるのかな。


「ラドン連邦って北のレプリコンと戦争しているそうだけど、勝ってるの?」

「……負けてはないって感じじゃない?昔は星系取られてたけど、今は取られてないし、追い返しているぐらい」


ラドン連邦は現在、北にいるレプリコンという名前の勢力と戦争しているけど相手は人類国家じゃない。というか生物じゃない。この手のSF作品にはよくある殺戮機械だ。ファーストコンタクト時から人類を襲う、というかシンカー共同体やテラニド帝国も襲う、機械達が住む勢力。


初接触の時から、かなり押されていたみたいだけど最近は持ち直してきており何とか対応出来ている状況。ただ、押し返そうとした時期に南にある勢力も侵攻して来たからラドン連邦は二正面作戦を強いられている。


あとはラドン連邦自体がかなり勢力としては大きいみたいで、二正面作戦をしているのにも関わらず領内の治安はある程度保っている。流石にステーションがないような星系や、少ない星系だと宙賊の拠点が出来上がっているのも珍しくないそうだけどね。


……まあ、まだ冒険者達から強制徴発が起きていないということは戦局はそれほど苦しくもないのだろう。今日も今日とて採掘してチタン掘って金稼ぐぞ。


「この宙域の、これとこれ以外はチタンだからそこを掘るように」

「了解です!」


元孤児達は、指示をよく聞いて素直に従ってくれるのでありがたいけどそろそろ一時的採掘領有権を主張した全域全てがチタンという美味しいエリアは無くなった。というか広いエリアが全て希少資源とかそんなにない。


なので宇宙船の方で特定の小惑星に関して、マーキングをして貰い採掘しないように注意する。砕いても一銭のもならない小惑星を、避けて採掘することが出来るならやっぱり効率はかなり良い。


……げっ、赤丸5つ。5隻の宙賊がこっちに向かって来る。


「艦隊全員に告ぐ。宙賊が接近中、数は5隻。距離40万キロ。交易ステーションの反対側だな」

「……レーダー範囲外なのに分かるの?」

「それが本当なら採掘船は一か所に固まるです」

「あらあら、出番かしら」


宙賊が現れたことを告げると、シルフィさんとイザベラさんが戦闘モードに入る。……普通の戦闘機のレーダーの有効距離が確か20万キロだから、40万キロ先の宙賊が接近しつつあることを把握出来るマップ画面ははっきりチート。


また中型採掘船が輸送船の周囲に集まり、陣形になる。輸送船のシールドも強固だけど、採掘船が入れ代わり立ち代わり盾になってくれるなら、相当な時間耐えるんじゃないかな。


想定通り、宙賊は接近し、輸送船と採掘船だらけの艦隊を見て我先にと襲い掛かって来るけどここは小惑星帯。戦闘機の隠れる場所なんて幾らでもある。こちらへ攻撃を開始する宙賊に対し、後ろからシルフィさんとイザベラさんが襲い掛かるけどもうこれ宙賊に逃げ場はないね。

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