ハーフエルフは外が眩しい

ミナヅキカイリ

第1話 プロローグ

 大きな木の根元に倒れている少年。腹部から大量の血を流し、今にも事切れそうな状態。あぁ、短い人生だったな。そう少年が死を覚悟したとき、少年の前に何かが現れた。ぼやけた視界にはそれが何か分からない。分からないまま少年は意識を失った。



「ユグドラシルに呼ばれたと思ったら、原因はこれですか」

「これ、じゃないでしょ。一応人間という種族よ。あなたは嫌いかもしれないけど、まだこの子は何も悪いことをしていない。それに見てよ」


 と、少女の声をしたものは、少年を覆っているものを指差した。


「あんな黒いもやに覆われて、しかも取り憑かれているわ。わたしに出来ないから、あなたに頼んでいるんでしょう?」


 少女はユグドラシルというらしい。緑色の髪に緑と白に色が分かれたひらひらのワンピースを着ている。ユグドラシルにあなた、と言われた人物は


「出来ることはしますがね、私に期待しないでくださいよ」


 人間と関わりを持ちたくないその人物は、少年の前で屈み、少年の腹をひと撫でした。手を離すと、腹からの出血は治まっていた。


「さすがね。じゃあ、この子の意識が戻るまで、看病してあげて」


 ユグドラシルに言われて、顔をしかめたが、少女は自分より格上である。渋々、少年を背中に背負い、自分の家へ歩いていった。後ろからユグドラシルが


「その子の意識が戻ったら、わたしのところにまた連れてきてよー」


 そう言葉を投げかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る