一回生の頃だった。
目が覚めてしまった。窓から明かりが入ってこないことを考えるとまだ起きるには早いだろう。何時なのだろうか。
クッキーがお腹を出して寝ている横を静かに通って、リビングへと出た。
食事のときは魔法光がいくつもふわふわ浮いていたが、すっかりそれも消えてしまっている。
人差し指を立てて、口の前に持っていく。人差し指の先をマッチに見立てて、火が灯るのをイメージする。『ティ・フラム』と唱えようとしたところで、止めた。代わりに溜息が出た。たぶん、深く長い溜息だった。
手探りでなんとかソファーに座り込む。ずんむと身体が沈む。眠気は以前としてやってこない。
これで家を出て二日目の夜かと思うとなんだか変な気分になった。学生時代のクラスメイトと会えたのは偶然だろうか。
クッキーと知り合ったのは、一回生の頃だった。公立の中学を卒業して私立の魔法学校に入ったのは、別に魔法を学びたいからとかそういう崇高な理念があったからではない。
みんな行ってるし。ほぼ義務教育のようなものとして位置づけられていたから。
そこで私は、すぐに自分が思ったよりも魔法を使える方の人間なのだと自覚した。とは言っても、順風満帆にはいかなかった。庶民出の私は、名家の皆々様からとにかく煙たがられた。
ある日、ストレスなのか環境なのか気圧なのか、ともかくひどく熱を出した。クラスメイトたちの目の前でぶっ倒れることになった。そのときにすぐに私を介抱してくれたのがクッキーだった。私よりも一回り小さい彼女が、解熱の魔法を使って、私を楽にしてくれたのだ。
それから私たちは少しずつ話すようになった。ありていに言ってしまえば友達になった。私はそれが心底うれしかったのだ。
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