寝る前に数を数えて

 ただ寝るためだけに用意された部屋だ。大きなベッドが一つ。

寝返りを三回しても落ちることはないだろう。


 ここで眠れるとなると、わくわくとそわそわが同時にやってきた。てっきり眠れない夜を、歩いて行けるところまで行くはずだったのにここで安穏を得る。


 変な気持ちだ。本当にこのまま眠ってしまってもいいのだろうか。このまま朝を迎えてもいいのだろうか。意味のない問答を繰り返している。本当に「意味のない」のか、私自身わかってないけど、きっと意味ない。こういうのは積み重ねた経験がものをいうって、クソ教師が言っていた。クソ教師のことを考えたら、胃がむかむかしてきた。やめよう。


 もう眠ってしまえばいいじゃないか。そうしたら朝がやってくる。朝になったらどうなるとかそんなことを今考えるべきじゃない。


 上着を脱ぎすてる。ポケットに入れていた金冠石ゴルディウムが床に当たり、じゃらりと音を鳴らした。


 ジーンズも脱いだ。部屋にパジャマとかローブがあればよかったが、本当にベッドしかない。仕方ないから、下着のままベッドに寝転がることにする。


 肌に擦れるシルクの感触が心地よかった。


 朝起きたら、何しようか。チェックアウトは何時なんだろう。朝食付きなのかな?


 できればパンがいいな。米よりも食べやすいから。


 なんて思っていると、まぶたはなんだか重くなってきた。思いのほか疲れていたのかもしれない。産みの親に家から追い出されるのなんて別に大したことじゃないよね? 


 大したことじゃないよ。もう、眠ってしまおう。おやすみ。おやすみ。

 

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