#2 E20/ コラム【帝銀伸び率高いが、産業の弱さ目立つ】

 コラム ベンス・アイクマン

[ミュンヘン - 経済研究所 15日]


 フランクフルトで公開された帝国株は、停滞したクムリ株や東銀株を大きく超え、右肩上がりといってもいい成長をここ10年ほどで見せてきた。

 また、国内では移民が増え、国策企業への投資と拡大によって、かつての米国のような拡大規模に追いつくような伸び率を見せていたが、依然としてこれといった産業が育っているわけでもなく、あっても代替可能で他の植民都市や勢力が持っているような特色がないために、どこかで新たな成果があれば、潮目が変わってしまうだろう。


 帝国銀貨ディナール(以下帝銀)のみに着目すると、話は別である。

 まず、地球における帝銀の信用精度は、他の通貨が死滅した現代において資金の逃げ場として唯一のものであり、実質的にかつての共通通貨のようなものになった。


 そのため帝銀相場に問題があれば、調節に手こずることになる(過去に実際なった)し、将来的にもリスクとして張り付いて回るだろう。


 しかし、そのリスクを許容せねばならないほど、他の通貨がダメな状態になってしまっているのである。帝銀以外を主力にしている人たちは、今後数百年のうちは為替相場に触るべきではないだろう。


 実際にどうなっているかといえば、クムリ銀貨や東銀は、安定性こそあるものの成長がほぼグラフ下に張り付いた状態で推移している。クムリの場合は移民の流出による経済難、東銀の場合は終わらない紛争状態による経済崩壊だ。

 根本的な問題としては彼らは我ら帝国以上に産業がなく、移民も流出してしまっているため、経済が破壊されてしまっているのだ。



 次に、国内経済についてはどうか。

 フランクフルト植民都市を初めとする各植民都市の人口は、年々増加傾向にあり、インフレの傾向にあるが、前述の通りの状況のため、国策としての調節機能は作動しづらい。


 帝銀相場の伸び率、物価上昇含めた上がり幅が増えていくこの状況で、耐えられなくなった臣民が住み着いた貧民街の拡大が起こり、税金支払いがされない事態が続いている。それだけならまだしも、武力を用いた暴徒による事件が散発、それを鎮圧しようとした皇軍がストライキを起こすという、カオスな状況を引き起こされた。


 ただ、幸いにも皇帝や内閣による税源確保のための政策が考案され、近年再確保されつつある新大陸への植民開拓権の勅許や国債が発行され、植民団に入団すると援助が得られるなど特典もあるようだ。

 これが軌道に乗りさえすれば、ひとまずはというところであろう。


 帝国には人的資源だけは豊富にある。きちんと産業に対して投資し、臣民が暮らせていく状況を作ることと、開拓事業だけではない貧民層に対する福祉政策が、安定したこの国の成長をもたらすであろう。


 帝国と皇帝陛下に栄光あれ。



 作 ベンス・アイクマン

翻訳・編集 デイリーエルバニュース東洋支部


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