第112話



 船長クロウとリーの話を黙って聞いていた副長ウイスがダフォーに声を掛ける、


「なぁ、ダフォー、時空間移動どころか、まだ光速移動にも達してないが、どうなんだ?」


「ええ、今、最高速で航行しているけど・・・、どうも飛び方がおかしいわ。光速移動には耐えれると思うけど、時空間移動はどうかしら? まだ早いかもしれない。もう一度、科学技術班に聞いてみる」


 そう言いながら、ダフォーはパネルに文字を打ち込み科学技術班に送信する。


「おいおい、そんなことしてたらニーナが妊娠しちまってよ、お腹が大きくなっちまってよ、この船で子供を産まなくちゃならなくなるぜ」


「大袈裟よ」


「そんな事はないさ、俺たちの母星まで何光年あると思ってんだよ。このまま航行してたら、ニーナの産んだ子が婆さんになっちまうぜ」


「女の子が生まれるとは限らないどころか、まだ妊娠なんかしてないし、兆しも何も無いのにもうそんな心配しているんだから」


「男でも女でもどっちでも良いんだよ、妊娠して産んじまったらどうするんだって話さ」


「その時は、クロウが名付け親になって何とかしてくれるわよ。ね、クロウ船長?」


 それを受けてクロウが、こともな気に答える、


「幼子には名前ではなく、夢を与える」


 その返事を聞いてウイスが質問する、


「じゃぁ、もっと大きくなったらどうするんだよ?」


「経験を与える」


「じゃ、じゃ、もっと大きくなったらどうすんだよ?」


「希望を与える」


「そんなことしてる間に、歳取っちまったらどうすんだよ?」


「安らぎを与える」


「じゃ、じゃ、じゃ、死んじまったらどうするんだよ?」


 それに答えたのはダフォーであった、


「あら、不思議なことを聞くわね。死んでしまったらどうしよもないじゃない」


「宇宙の偉大なるエネルギーと融合するだけだ」


 ダフォーが言った後にクロウは言うが、更にダフォーが報告する。


「科学技術班から連絡が来たわ。異常発見、速やかに対応、安全航行に徹する」


 長い航海を終え、更に長い航海へ旅立つために、クロウが全乗組員に艦内放送で伝える。


「帰るぞ、我らの星へ」


その言葉に答えたのは、ウイスであった、


「マーク・トウェイン。ヨー、ソロー」



 過ぎ去りし過去は既に無くなったもの。

良き思い出だけを胸にしまい、遥遠くの空を見れば良い。


 未だ来ないものに悩む必要はない。

未来に居る自分が解決してくれるであろう。

暗い宇宙に光る星を見よ。


 過去は目の前を過ぎ去っていく時間。

未来は変わるもの。

変えるのは今を生きる力。

星の輝きを掴め。


 地上に住む人達よ。

私は、此処からあなたたちを見ている。

戦争で灰になった街。

大気汚染や水質汚濁で住むことのできなくなった街。

その地球と呼ばれている星に住む人類達よ。

私は、過去から現在までを知っている。

未来は見れない。

何故なら、

それは作るものだから。


 私の名はルーナ

国を滅ぼされ神話は無い

戦いに敗れ神殿も破壊され

有るものは無く

無いものの中で生きる神

私は月の女神、ルーナ


 全てを失いし夜に光る女神。


  完

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