第99話



 その頃、敵宇宙空母艦隊の連絡網では、


「ジゼル、戦闘機が次々に討ち取られていく。ここまでが限界だ。逃げ遅れると、俺たちの空母まで被害が及びかねない。俺たちは引くぜ」


「ジゼル総督、どうしますか?」


「逃げたい奴は逃しておけ。なんと言っても兵器購入のお得意さんだからな」


「レプトン砲で、奴ら海賊どもを叩きますか?」


「何を言ってるんだ? 砲術長。今までの戦いで分かった筈だ。奴らは、此方が素粒子を充填し始めたら私たちが持っていない幕を張って、素粒子を分解する。その間に奴らが素粒子を溜め込んで此方に照準を合わせたら、あの時の旗艦のように木っ端微塵だ。しかし解せぬな。奴らはどうして、あれだけのエネルギー砲を放てるのだ」


「ならば総督、奴らの船には素粒子砲を放てる砲門は一つしかありません。しかも我らの砲筒よりも口径が小さい。そして我らの戦闘空母には砲台が2基、一斉射撃をすれば仕留めれるかもしれません」


「ほう、なるほどね。艦長、今の砲術長の意見をどう思う」


 それに応えて戦闘空母の艦長が言う、


「今、この船は制動中です。この状態からなら砲門は1基しか使えません。しかし、全力前進して、2基の砲門を開いて航行したなら、レプトン砲を発射したとしても後ろに飛ばされることはないでしょう。但し、真っ直ぐに海賊船に向かって航行しなければなりません」


「なるほど、作戦は立てられるか?」


「斜め方向から推進しましょう。奴らの船とすれ違いざまに光速移動、そのまま時空間移動へ移れば作戦に失敗したとしても、逃げ切ることができます」


「ようし、分かった。それで行こう。あとは任せたよ、艦長。それと君の部屋を借りるよ、艦長室で休ませてくれ」


「了解、早速作戦に移ります」


 

 そして海賊船内では、


「船長、敵戦闘機が空母に帰還しようとしています」


 通信士のレイが、クロウに伝える。


「そうか、迎撃隊に、追うな、と伝えてくれ」


「敵宇宙空母艦、戦闘空母から離れていきます。戦闘空母は微速前進中、此方に向かっています。同時に巨大エネルギー2箇所に確認。レプトン粒子です。エネルギーレベル1」


「迎撃隊に伝えろ、直ちに離脱、戦闘領域から離れろと。できるだけ遠くにだ」


「敵戦闘空母、速度を上げています。エネルギーレベル2」


「どうするの、クロウ?」


 ダフォーが尋ねる。


「戦闘空母、さらに速度を上げています。エネルギーレベル3」


「此方も前進だ、レプトンを充填、エネルギーレベル4だ」


「了解、船長」


 砲術長のキストが答える。


「エネルギーレベル4を確認」


「ダフォー、体当たりだ。奴らの横っ腹に正面から突っ込め」


「了解、クロウ」


「エネルギーレベル5」


「キスト、奴らがレプトンを放った直後に、此方からもレプトンを撃てるか」


「エネルギーレベル6」


「ああ、素粒子分解幕を張っていても揺れだけは防げない、照準を誤るかもしれないが、それでもやってみるがね」


「エネルギーレベル7」


「反重力装置全開だ」


「エネルギーレベル8」


「キスト、エネルギーレベル2で発射だ。連続して撃てるか」


「ああ、やってみるよ。但し当たるか当たらないかは運だぜ」


「エネルギーレベル9」


「ダフォー、全速前進。一発目のレプトンで奴らの船の動きを止める。その後、横っ腹へ正面から突っ込んでくれ」


「エネルギーレベル10」


「キスト、聞こえたか。その時が二発目のレプトン砲だ」


「ああ、聞こえたさ」


「砲門、開きました」


「キスト、放て」


 その直後に戦闘空母艦から二筋の光が走り、海賊船を吹き飛ばした。

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