第95話



 船内放送は、船長が緊急連絡をしている、


「クロウだ。全乗組員に告ぐ、未確認艦隊発見。全乗組員、緊急配置。迎撃隊スクランブル体制」


「おおおっと。来なすったぜ」


 ルイスが真顔に戻って言う。


「シラー、離発着室へ急ごう。ニーナにルー、援護を頼む。行くぜ」


「了解」


 軽い冗談話が終わり、食堂に居た乗組員たちの心が一つになる瞬間だ。

ルイスにシラー、ニーナとルーが食堂を飛び出て真っ直ぐに離発着室へ向かうが、ルイスは扉を閉めるその前に、


「マギー、珈琲は取っておいてくれ、無事に帰れたらお祝いだ」


「あなたたちは必ず無事に帰って来るわ。乾杯は発泡酒でね」


「あったのかよ」


「ええ、あったわ」


 ルイスの最後の言葉にマギーが答える。



 リーは、一人、艦橋へと急ぐ。


「船長」


「ああ、リーか。天面の画像を見てみろ。今は小さな点にしか見えないが、あれが敵艦隊だとしたら厄介だ」


「あれは?」


「恐らくコスモ・バトル・シップ3隻だ」


 そこへ、通信士のレイが報告する、


「未確認艦隊分析完了、間違いなく敵艦隊です。一隻は戦闘空母、以前遭遇した武器商人の星ロスゴダの船です。残り2隻は、今までの資料にない船ですが形状からして宇宙空母だと思われます」


「船長よう、更に厄介になったな」


 ウイスのその言葉を聞いてリーの顔が曇る。


「リー、ニーナは迎撃機に乗ったのか?」


「はい、一目散に離発着室へ走りました」


「二人乗りの迎撃機には指令を出したつもりはないんだが・・・、ニーナのことが心配か?」


「いいえ、彼女なら・・・」


「安心しろ。彼女を信じるんだ」


 その後で航海長のダフォーがクロウに声を掛ける、


「あの男は、まだ生きていたのね」


「ああ、そうだ。確かに月で撃ち落としたのは、ジゼルの乗っている旗艦のはずだった。しかし、共に飛んでいたはずの戦闘空母は確認できていなかった。奴は、危険を感じて最初から旗艦に乗らずに戦闘空母に乗り換えていたんだ」


「じゃぁ、あの空母2隻は?」


 クロウは、ウイスの質問に答える、


「多分、商売の得意先に応援を頼んだんだろう」


 続いて指令を出す、


「主砲、常に敵艦隊に照準を絞っておけ」


「了解、もうやってるよ」


 クロウの指令に答えて砲撃長のキストが笑っているかのような声で答える。


「迎撃隊、相手の船から戦闘機を確認次第発艦」


「おい、聞こえたか? 戦闘機を確認次第、命令があってもなくても飛ぶぜ」


 ルイスが全迎撃機に命令する。


「聞こえたかい、リー。俺たちは常に戦闘はしない。迎撃だ。しかし攻撃を受けたなら、先手を打つこともある」


「あら、副長さん、まるで軍師ね」


「時には、飛ぶこともあるがね」


「その通りだ。ウイス、迎撃機ハァー2で発艦準備だ」


 ウイスの顔が真顔になる。

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