第54話
クロウ海賊船がイーグル・アイ・ネブラをゆっくりと航行している。
「船長、この白色矮星も無駄足だったな」
副長のウイスが頭の後ろで両手を組みながら、のんびりと言う。
「あらあら、そんなにのんびりしていて急に奴らが現れたらどうするつもりかしら」
「なーに、その時は船長の指示に従って迎撃するのみよ」
「そんなだらしのない格好で直ぐに動けるのかしら」
「俺は副長だぜ、いつでも覚悟はできているさ」
「覚悟の話は聞き飽きたわ。ね、ルイス」
航海長の問い掛けに迎撃隊隊長のルイスが答える、
「覚悟ってのは度胸だよ、いつでもどこでも惜しみなく捧げる命さ」
「よく言うよ、そう言うお前は離発着室から出てきてこんなところで何してるんだよ」
ウイスがまだ腕を組みながら喋っているところへ通信士のレイが報告する、
「マザーが語りかけています」
「信号か? 受け取ってくれ」
「はい、音声信号は特定の人物しか聞けませんので文字化します」
「読んでくれるか」
レイの報告に船長のクロウが答える。
レイの言う特定の人物とは船長のクロウ以外に誰も居ない。
「移住者、青い星を侵略する時、武器が動く。以上の繰り返しです」
暫く沈黙した後で、クロウがレイに伝える、
「マザーに、了解、と送信してくれ」
「了解、送信します」
「全乗組員に告ぐ、時空間移動だ。目標、月」
「船長?」
ウイスが頭の後ろで組んでいた両手を解いて緊張気味に言う。
「そうだ、マザーは、月に置いてきた送受信機が移住者の送信を傍受して、危険を知らせている」
クロウの答えにウイスが言う、
「そう言うことか、奴ら武器商人はイーグル・アイには既にいない。月へ飛んでいたんだ」
「座標位置確認、目標月、全速前進」
ダフォーが言い放つと、船は加速し始め、やがて光速を越えて時空間移動に移る。
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