第43話



 クロウは一人、船に戻ると艦橋の中央に聳え立つようなコンピューターの前に立つ。

超素粒子変換装置を積んだ船の中では、すべての装置が働き続けている。

彼はコンピューターに話しかける。

この船のマザーと呼ばれているコンピーターとは会話が成立する。

ただし音声が記憶されており、特定の人物しか会話ができない。


「親愛なるマザー、惑星ウォルフに奴らは居なかった」


「居てただけ」


「存在を確認することが出来ませんでした」


「既に惑星から離脱していた」


「私たちが到着する前に逃げられたと?」


「悟られていた」


「では、何処へ」


「飛ぶ鳥、爪鋭く、俯瞰の目を持つ」


「俯瞰の目を持つ、爪の鋭い鳥」


「雲に紛れた広い空」


「ありがとう、マザー。深く感謝します」


 そう言うとクロウは船から、波動回線を使って中性子星に住む全乗組員に呼びかけた、


「全船員に告ぐ、出港準備」


 それだけを言うと、クロウは自身の出航準備の為に、母一人が待つ家へと船を降りた。


 翌日、船乗り達が続々と船に乗り込んで来た。


 艦橋に、いつものメンバーが集まると、


「クロウ、今度は何処へ行くつもりだい」


 と副長のウイスが船長に声を掛ける。


「わし座、わしの目星雲だ」


「こりゃたまげたね。あそこは星雲だけでも、端から端までで何光年もあるんだぜ」


「探し物は必ず見つける」


「本気の船長、良い目をしてるよ。乗組員全員乗船確認、出向準備良」


 ウイスの報告を受けてクロウは航海長に命令を下す、


「出港」


「了解、座標位置確認鷲座、目標イーグル・アイ・ネブラ、出港」


 クロウ船長の指令に勢いよく女性操舵師のダフォー航海長が応えると、船は水飛沫を上げながら湖から離脱し、滝のように大量の水を船底から流しながら空へと舞い上がった。

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