第37話



 カシオペア座内、惑星型星雲、その中をゆっくりと航行している船がある。

ゆっくりと言っても地球型宇宙船であるならば最高速度に達している。


 船は白色矮星の遠く隣にある中性子星を目指して航行している。

この中性子星は、質量が重く、空間を少し歪めている。


「おい、ダフォー、暫くぶりに帰って来たからって、操舵を誤るなよ」


「あら、副長、そう言うならご自分で舵輪を回してみたら如何かしら?」


「遠慮させてもらうよ」


 この船の副長ウイスと女性操舵師のダフォーがまるでふざけているように会話をしている。


「しかし、上手い具合に歪んだ空間を水平航行出来るもんだね。これじゃブラックホールも向こうから逃げていくね」


「本当にそうなら、ブラックホールの横をすり抜けてみましょうかしら?」


 ダフォーに声をかけたのは、今度は迎撃隊隊長のルイスだ。


「勘弁してくれ、命がいくつあっても足りないぜ」


「じゃ、無駄口を叩かないで、自分の席に座ってなさい」


「イエッサー、ダフォー航海長」


 暗闇の中で、まるで見えているかのように、全てのものを吸い込んでいるような空間の穴を遠く、船は安全に航行している。


 船は、自ら光り輝いている星の真上で制動する。

そしてクロウ船長がダフォーに声を掛ける、


「着湾だ」


「了解、着湾」


 この船で一人しかいないと言われるほどの操舵師、ダフォー航海長が復唱し、宇宙船は中性子星の湖へ向かって微速前進を始めると静かに着水し、水面で浮かぶ一隻の船となる。

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