第35話



 ドームの中で住む人々が眠り始めた頃、一台の小型バギーがドームの入り口をくぐり抜け、大きなケースを第2管理棟へと運んでいる。

ケースの行き先は研究室である。

そこには道中でやっと無線連絡が届いたファンナが待っていた。


 ケースが届くと早々に謎の金属がファンナの指示で運び込まれ、ファンナは金属の分析を始める。


「ここからは私に任せて、貴方たちはルームに帰って休んでちょうだい。分析が済めばすぐに教授たちの元へ行って手伝って欲しいから」


 彼女は、朝までにこの金属の分析を済ませるつもりである。


 一方、五時間程度の睡眠をとった現地の隊員たちは、朝食を済ますと宇宙服に着替えて、洞穴へと進んでいる。


 作業は、思った以上にに捗り、扉がもうすぐで開きそうになった時、セクター1から調査団の隊員二人が帰って来て、洞穴の中の教授オーレンに報告する。


「オーレン博士、金属の種類が分かりました。地球と同じものです。ニッケルと銅の合金です」


「なるほど、未知の金属ではなく、地球と同じ原子か」


 その時、最前線で働いている隊員の一人が言う、


「教授、ここまで来たら扉を開けられます」


「分かった、押して中のものに損害があってはいかん。ロープをかけれるくらいの穴を作って、扉を引っ張り出せ」


「了解」


 そう言って一人の隊員がドリルで斜めに穴を開け、もう一方にも同じように穴を開け、ロープが通せるように穴と穴を繋げる。


 ロープを穴の中に通すと、隊員たちが並び、ゆっくりと扉を引っ張る。

不意に扉の上方が傾くと、扉が音を立てて倒れる。

その時に居合わせた全員が、中の光景を見て固唾を飲む。


「なんてことだ、ルナリアン達は、ここでいったい何の研究をしていたんだ」


 オーレン教授の第一声であった。

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